移動図書館日記

これは、移動図書館「ロマコメ号」の司書・菜箸千夏が、業務日報の行間からこぼれ落ちた「分類不能」な記憶を綴る、静かな魂の記録です。

かつての大災害「アレ」がもたらした巨大な混沌(カオス)への恐怖から、千夏はNDC(日本十進分類法)という完璧な「秩序」を心の防衛線として生きています。しかし、巡回先の仮設住宅や復興地で出会う人々の営みは、彼女の引いた境界線を軽々と越えてきます。

理屈では割り切れない感情、非効率な会話、予測不能なハプニング。千夏が頑なに守ろうとした秩序が、温かい「無秩序」によって解きほぐされていく過程が、数々の書物の記憶とともに描かれます。

これは、傷ついた世界で正気を保つために「分類」し続けようとした司書が、分類できない「生」の輝きに救われ、ふたたび世界と接続していく再生の物語です。

移動図書館日記

移動図書館日記(8)

地図の書き込み 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。ブックカフェ『シズカ』で見つけた傷だらけの地図。「ぼくのひみつきち」という書き込みが教える、完璧な資料よりも大切な記憶の痕跡。構成・千早低小倉。[移動図書館/地図/記憶]
移動図書館日記

移動図書館日記(7)

昼と夜の区別 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。外出せず昼夜の感覚が曖昧になる高齢者。ロマコメ号が届けるのは本だけでなく、週に一度の確かな「時間の座標軸」なのかもしれない。構成・千早亭小倉。[移動図書館/高齢者/生活リズム]
移動図書館日記

移動図書館日記(6)

行列と世間話 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。貸出の列で始まる井戸端会議は「業務遅延」か、それとも「生活の音」か。効率を求める私の秩序と、村の人々が作る温かい混沌。千早亭小倉・作[移動図書館/コミュニティ/復興]
移動図書館日記

移動図書館日記(5)

折り紙の動物園 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。子どもたちが残した折り紙のエビとラッコ、そして歪んだハート。分類不能な「感情の塊」を、司書はどう処理し、どこへしまうのか。千早亭小倉・作[移動図書館/子ども/司書]
移動図書館日記

移動図書館日記(4)

柱時計の音 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。手書きの貸出ノートは、この村の歴史書だ。駅長さんの妻だった女性が語る「柱時計の音」と、数字には表れない定性的記録の大切さ。作・千早亭小倉 [移動図書館/記憶/復興]
移動図書館日記

移動図書館日記(3)

閉じられていない絵本 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。返却された絵本のわずかな隙間は「息継ぎ」のための通路。厳格な高島副館長が見せた意外な反応と、守られた5ミリの物語。作・千早亭小倉。[移動図書館/本/司書]
移動図書館日記

移動図書館日記(2)

折れた突っ張り棒 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。余震の揺れが呼び覚ます「あの日」の記憶。閉架書庫で見つけた折れた突っ張り棒が意味する、日常という秩序の脆さについて。[移動図書館/復興/心のケア]
移動図書館日記

移動図書館日記(1)

カワラナデシコと秩序 移動図書館司書・菜箸千夏の日記。駅で見かけたナデシコの花と、分類できない記憶。完璧な「秩序」を求める心と、復興の中にある「混沌」との葛藤の始まり。[移動図書館/復興/司書]
移動図書館日記

移動図書館日記(零)―― はじめに

日記という名を借りた記憶 移動図書館司書・菜箸千夏の日記、第0話。業務日報には書けない「分類不能な感情」と、上司に否定された「ポエム」。これは震災の混沌から秩序を取り戻し、私が私であるための防衛線として綴る、記憶の再構成の記録。[移動図書館/プロローグ/菜箸千夏]