LIFE

「二つ目と代弾き」シリーズ

お題002. たい焼きの切り身

築四十年の木造アパート「メゾン干物箱」の二階には、昼下がり特有の、煮出したはぶ茶のような香ばしくて気怠い匂いが漂っている。西日が腰をかがめて、破れた障子の隙間から差し込み、畳の上に細長い光の鍵盤を描く。その光の上で、馬楼とひなが向かい合って...
真田まる「夜明け前のひとりごつ」

ヴィーナスの落書き

滑らかな肌の 丘陵おかを越えて辿り着いた 秘密の谷間​神様がそこで 筆を滑らせいたずらに描いた 黒い線​守っているのか 隠すのか絡まり合うた 縮れ毛はうわ、突然の驟雨やなんだなんだなんだなんだなんだボディソープ持ってこんかい!真田まる
真田まる「夜明け前のひとりごつ」

月夜のバナナ

夜空の皮を つるりと剥けば 現れたのは 白い実ひとつ甘いか渋いか 知らんけど 星のフォークで 突き刺して私の憂いも ひとくちサイズ モグモグ噛んで 飲み込むわ真田まる
「二つ目と代弾き」シリーズ

お題001. 遠心力と赤い抜け殻

自販機のコンプレッサーが時折、不機嫌そうな唸りを上げる以外、世界は回転するドラムの音だけに塗り潰されていた。乾燥機の排気口から漏れ出る、熱せられた綿埃の匂いが、深夜のコインランドリーの空気を重く塞いでいる。お決まりのムワッ。窓の外の小雨がこ...
ここあん村コント

「二つ目と代弾き」コント01

【登場人物】酔酔亭 馬楼: 二つ目の落語家。自身の「だらしなさ」を「芸の肥やし」という言葉で正当化しようとする。糠森 ひな(20代半ば): 「代弾き」のピアニスト。完璧な演奏技術を持つがゆえに、人生の不協和音も許せない。【場面設定】深夜のコ...
ここあん村コント

氷上静ひとりコント

【登場人物】氷上 静(ひかみ しずか):現代思想家兼ブックカフェオーナー。世界を完璧な論理で整理したいが、物理的な「糊のり」や「汚れ」といった現実の粘着性に弱い。【場面設定】深夜のブックカフェ「シズカ」の厨房。営業が終わり、静けさに満ちた空...
ここあん村コント

純粋理性批判的な何か

【登場人物】郷田 剛:克枯町商店街会長。彼の認識フィルターを通すと、森羅万象は「郷田を称えるための舞台装置」に変換される。矢尾 玲子:きさらぎタウンの主婦、自称ステキさん。彼女の認識フィルターを通すと、あらゆる事象は「ステキな自分」を修飾す...
ビターここあんシリーズ

おはぎはんの錯覚

表通りから一本外れたパチンコ屋の裏口。派手な刺繍の入ったスカジャンを着た男が、何か黒い物体を拾い上げると、無造作に植え込みの奥へ放り投げた。缶コーヒーの空き缶に違いない。男は、吸っていた煙草の火を、唾で濡らした指で揉み消し、その吸い殻も同じ...
Kindle

千早亭小倉著『ハッピーエンドの瞳を持つ君と、できそこないのワンダーランド: 昭和に負けるか、僕らのドタバタ映画制作日誌』

ここあん村(旧ココアン区)が舞台の物語(3)『ハッピーエンドの瞳を持つ君と、できそこないのワンダーランド』千早亭小倉著/Kindle版「この映画、撮れるのか⁉」――40年の時を超えたトンデモ脚本が、僕らの青春をかき乱す!大学の自主映画サーク...
ここあん大学コント

コント「地質学的欲求と経済的飢餓」

場所:ここあん大学早稲田キャンパス、学生ラウンジ地下1F「アンコンフォーミティ」。コーヒーの香りとカビ臭が漂う、外界から隔絶された空間。登場人物:環奈かんな(古生物学):万事を数億年単位で捉えるため、目の前の「金欠」を「地層形成のわずかな摩...