ここあん村(旧ココアン区)が舞台の物語(1)
『水底に差す月光の輝きをキミはまだ知らない。: 氷山女と深海男』
千早亭小倉著/Kindle版
水底の月光、氷の哲学者
その冷たさの奥にある輝きを、まだ誰も知らない。孤高の女性哲学者と、彼女の心に触れた青年の、静かで深い物語。
「冷たい女の笑顔が好き」――少し風変わりな恋愛観を持つ大学生ハル(恋流波 陽)。彼が心を奪われたのは、ココアン大学で偶然出会った、美しくも笑わない女性、氷上 静だった。学生たちの間で「氷山女」と噂されるほど、怜悧な知性と近づきがたい雰囲気を持つ彼女は、若き哲学研究者。その孤高の佇まいに、ハルは強く惹かれていく。
ひょんなことから静の研究室を訪れるようになったハル。年の差も立場も超えて、二人は哲学的な対話や日常の断片、そしてハルが見る不思議な夢(「移動図書館車かんたのかなしみ」)を通して、言葉を重ねていく。まるで深海に差し込む月光のように、ハルの屈託のない(時に核心を突く)言葉は、静の閉ざされた心に静かな波紋を広げ始める。一方ハルも、静の知性や孤独の中に、これまで感じたことのない安らぎと、同時に危うさを見出すのだった。
孤独とは何か。理解するとはどういうことか。人と人が惹かれ合うことの不思議さとは――。 繊細な心の交流と、日常に潜む哲学的な問いを丁寧に描いた、静謐で心揺さぶるラブストーリー。
文学的な香りのする小説や、少しビターで深みのある恋愛模様が好きなあなたへ。 二人が見つける「水底の月光」の輝きを、ぜひ本書で体験してください。


