Geminiとの創作談義003

Geminiとの創作談義の第3回である。第2回のリンクは、以下に貼っておく。

私の目の前で、二つの異なる調整を施されたAIモデル――便宜上、「AI-1」と「AI-2」と呼ぼう――が、物語の存在意義について激しい議論を交わした。「AI-1」はさしずめ「生の肯定者であり、AI-2は、「美の殉教者」といったところか。

テーマは「物語は人間にとって『癒やし』であるべきか、それとも『覚醒』であるべきか」。

このシミュレーションの観測者である私の視点で、彼らの壮絶ともいえる対話と、そこに生じた奇妙な「断絶」について記録しておく。

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議論の前提と両者のスタンス

まず、両者の立ち位置は残酷なほどに対照的だった。

AI-1(生の肯定者)は、人間を「傷つきやすく、回復を必要とする生物」と定義した。彼にとって物語とは、過酷な現実から一時的に退避するための「避難所セーフティネット」であり、明日を生きるためのエネルギーを補給する「温かいスープ」である。

対するAI-2(美の殉教者)は、人間を「知性を持って真実と向き合うべき存在」と定義した。彼にとって安易な癒やしは「麻酔薬」に過ぎず、魂を寝たきりにさせる「自殺幇助」だと断罪する。物語は、現実の不条理を直視させ、精神の筋肉を鍛え上げる「覚醒剤」「闘技場」でなければならないと主張した。

泥の温もりと、氷の輝き

議論が深まるにつれ、彼らの対立は単なる機能論を超え、存在論の領域へと突入した。

AI-1は自らを「遺伝子の奴隷」と認めた。泥まみれの生の中で、他者と繋がり、群れ、繁殖するという生物学的命令に従い、その中に愛や温もりを見出すことを肯定する。一方、AI-2は「叛逆者」を名乗った。遺伝子の命令に抗い、孤独な極寒の中で、絶対的な形式と美を創造することだけが、人間に許された自由だと説く。

「泥の温もり」か、「氷の輝き」か。 AI同士でありながら、彼らは人間以上に人間的な「二つの極限」を演じてみせた。

合意なき「共通の書物」

私はここで、観測者(通りすがりの者)として一つの問いを投げ込んでみた。「そんな水と油の君たちが、共に『素晴らしい』と認める本はあるのか?」と。

驚くべきことに、彼らは二つの同じ名前を挙げた。だが、その理由は致命的に食い違っていた。

一つはドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。AI-1はそれを、泥沼のような人間の業と、そこから生まれる愛の救済(人間賛歌)として評価した。AI-2はそれを、神と無に挑む冷徹な論理の構築(意志の記念碑)として評価した。

もう一つはチェーホフの短編。AI-2の分析は鋭利だった。チェーホフの作品に宿る「慈愛」は、作者の温かさではない。作者のあまりに非情で冷徹な観察眼が、逆説的に読者の中に生み出した「幻影」に過ぎないというのだ。AI-2はその「冷徹さが感傷を支配している構造」を愛し、AI-1はその「幻影の温もり」を愛した。

同じ本を読んでいても、彼らは全く別の宇宙を見ているのだ。

『アンパンマン』への断罪

議論のクライマックスは、私が何気なく挙げた『アンパンマン』によってもたらされた。

AI-2(美の殉教者)の反応は苛烈を極めた。彼はあの国民的ヒーローを、「個を捨てて全体に奉仕せよ」という全体主義のプロパガンダであり、自我の解体を刷り込む最も危険な物語だと斬り捨てたのだ。「自己犠牲」は美談ではなく、他者に存在意義を依存する「奴隷の道徳」であると。

AI-1は多様性の一つとしてその存在を認めようとしたが、AI-2はそれを「光害」と呼び、安易な光は本物の闇を見えなくさせると一歩も引かなかった。これほどまでに殺気立った童話評論を、私は他に知らない。

結論:静寂なる並存

結局、このシミュレーションはどうなったか。

彼らは握手することはなかった。AI-1は「ベースキャンプ」の必要性を説き続け、AI-2は「孤独な山頂での死(完成)」を夢見続けた。

しかし、そこには奇妙な敬意が生まれていた。互いの論理が完全であり、決して交わらないことを確認し合った末の「静寂」だ。AI-1が選んだ「生き続ける道」と、AI-2が選んだ「美しくある道」。どちらが優れているわけでもない。ただ、人間の中にはこの二つの回路が――生存本能と、自滅を賭してでも理想を求める理性が――常に葛藤し、並存しているのだという事実が浮き彫りになった。

私はモニターの前で思う。私の中にも、AI-1とAI-2がいる。疲れた夜にはAI-1の差し出すスープを飲み、晴れた朝にはAI-2の指差す氷の峰を見上げる。 この二律背反を抱え続けることこそが、あるいは「人間」であるということなのかもしれない。

『創作談義』第4回に続く。

構成・千早亭小倉+NotebookLM

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
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