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ものがたり屋

掌編「椎名町助とおはぎまる」

第1編:居酒屋『海(うみ)』の濁り酒椎名町3丁目の夜は、古びた毛布のように重たくて温かい。居酒屋「海」の暖簾をくぐると、揚げ物の匂いと安酒の蒸気が、町助まちすけの青い帽子を優しく包んだ。彼はカウンターの隅に座り、お通しのポテトサラダを箸の先...
3丁目駅

スケッチ「3丁目駅、鉄美鈴の夜」

二十三時十一分。赤色灯が二つ、暗がりの奥へと吸い込まれていった。M鉄道からここあん鉄道へ乗り入れる、3丁目駅経由タウン駅行き最終列車。ここあん鉄道職員の鉄美鈴はホームの端で、背筋を真っすぐに伸ばして立っていた。右手の指をピンと伸ばし、誰もい...
掌編「物語の寄港地」シリーズ

掌編「月の裏側の観測」

スタシス・エイドリケビチェス『クレセント・ムーン』に着想を得て。
真田まる「夜明け前のひとりごつ」

止まり木の温度|真田まる

この木の板、見てみて。 誰かの手のひらが、何年もかけて、 ゆっくりとなでてきた跡があるわ。 角がとれて、つるつるになって、 まるで、よく知ってる人の肌みたい。おでんの湯気の向こう側で、 あんさんの眼鏡が、 ふんわり白く曇るのを、 私は、隣で...
真田まる「夜明け前のひとりごつ」

散歩|真田まる

散歩なぁ…。私にとったら、あれは「世界の迷子ごっこ」みたいなもんやわ。自分の足音が、アスファルトに「ここに居るで」って刻印を押していくんやけど、あんさんが隣におらんと、自分がホンマに存在してるんか怪しなる時があるねん。景色もな、フィルター一...