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環奈への手紙

アンバーの遮光瓶を棚に戻し、指先に残ったベチバーの根の土臭さを静かに吸い込む。湿った土壌の香りは、神経のささくれを均すのに都合がいい。作業台の端に置いたタブレットの画面が、静かなアトリエの空気を白く切り取っている。植物の化学組成について調べ...
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コント「積み重なるもの、消えゆくもの」

場所ここあん大学学生ラウンジ「アンコンフォーミティ」(早稲田サテライトキャンパス地下)登場人物空野 円(そらの まどか): 哲学科講師。窓際で動かない雲をずっと見ている。花野 環奈(はなの かんな): 古生物学M2。ソファーの横に積まれた「...
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移動図書館日記(87)

これは、日記という名を借りた私の記憶。――「主任 菜箸千夏」。主任という新しいラベルが、まだ糊の乾ききっていない付箋のように、私の胸元で少しだけ浮いている。一人で背負っていた書架の重みを、今はチームという丈夫な箱に分けて収めている。二階のガ...
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図書館長より職員のみなさんへ

「段階的開放に伴う業務指針と、移動図書館の役割再定義について」高島雅也皆さん、おはようございます。ここあん村立芸術図書館は、三年間にわたる「完全閉鎖」という異常事態に終止符を打ち、一階および二階の一部を村民に開放しました。まず、今日という日...
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コント「プロローグの停滞」

プロローグの停滞【登場人物】ギオン(別名、オノマトペ王子):すべてを擬音で処理する感覚派。イチギョウ(別名、名言スナイパー):会話に唐突に金言をねじ込む哲学派。ケイヨウ(別名、修辞の貴公子):現象を病的なまでに長く、詩的に描写する耽美主義者...