謎多き、ここあん村の自然。
あのことを機に村にあらわれた湖、池袋との境界にある緑深いここあんの森、十字路に現れる五番目の道、その先の霧のところ、そして五角形の巨大な塔ペンタ。
静寂と生命の息づく場所――ここあんの森
都市と自然の境界線
都市の喧騒が遠い残響となって消え去り、アスファルトが途切れて土の匂いが立ち始める村のはずれに、その深い森は広がっています。一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫で、湿った土や植物が分解される過程で放つ独特の香りに包まれます。そこは、人の手による区画整理の論理が及ばない、自然の法則だけが支配する場所です。
巨大な生命体のような空間
この森は単なる木々の集合体ではありません。まるで一つの巨大な生命体のように、厳かで穏やかな呼吸を繰り返しています。夜明け前には深い静寂が支配し、陽が昇れば鳥たちの合唱が始まり、木漏れ日が地面に複雑な幾何学模様を描き出します。雨が降れば、無数の葉を打つ雨粒が森全体を巨大な楽器へと変え、夜には月光が銀色の衣のように木々を覆います。何百年という時間をかけて築き上げられた完璧な生態系が、生と死、成長と腐敗を繰り返しながら、圧倒的な調和を保っています。
奥深くに潜む気配
森の奥深くに進むと、外部との接触を断ち切ったような、孤高で研ぎ澄まされた気配を感じることがあります。それは誰にも知られることなく、ひっそりと灯る小さな灯火のような、人の営みの痕跡です。その気配は森の静寂を乱すことなく、むしろその荘厳な空気と不思議な調和を見せており、森そのものが何か大切な「秘密」や「物語」を静かに守っているかのような雰囲気を漂わせています。
ここあんの森に暮らすいちごとなつひこの物語(Kindle版)

ペンタ
ここあん村の「霧のところ」最深部に聳え立つ巨大塔ペンタは、大災害の際に失われた知性の質量を補完するかのように隆起した、五角形の石造りの塔です。ボルヘスの「バベルの図書館」を彷彿とさせるこの不条理な垂直空間は、内部で時空が歪み、外観から推測される以上の階層を内包しています。
下層階には「ここあん高校」、中層階には「ここあん大学芸術学部」と、ここあん村の教育機関が占め、生徒たちはこの異界への登校を日常としています。
村からは霧に隠れて見えませんが、屋上からは村の営みを箱庭のように一望できます。地図にない「五番目の道」だけがこの塔へと続き、管理人のさやかっくすがパルクールで外壁を自在に駆け巡るその姿は、重力に抗う知性の限界を肉体で嘲笑っているかのようです。
自称管理人「さやかっくす」

ここあん湖
霧のところ
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