無名作家の奈落「常磐荘」 掌編「常磐荘綺談」 ジッポーのキシンッという金属音が響いた。湿った苔と冷え始めた土の匂いを、オイルがたちまち上書きする。安煙草の紫煙が囁くように耳元を通り過ぎても、鴨下栞は振り返らなかった。この石階段は栞の観測所だが、同時に、後ろにいるたたこの指定喫煙所でもあ... 2026.02.15 無名作家の奈落「常磐荘」
栗きんとん99 掌編「お菓子どうどうめぐり」 活田町のライブハウス「ガーデンガガガーデン」の楽屋は、人の匂いがした。ステージの狂騒を吸い込んだアンプが、沈黙のうちに熱を放っている。床には無数の靴跡と、黒いシールドケーブルが力なく転がっていた。誰かが、込み上げる感情を唾と一緒に飲み下す音... 2026.02.15 栗きんとん99