脇道

ものがたり

掌編「泥の塔」

エレベーターホールの床に、乾いてひび割れた泥の染みが、所在なく広がっていた。ここを遊び場にしている悪童たちの残したものか、あるいは大災害の後に隆起したこの塔そのものから染み出た泥なのか、緑野翠村長にもわからない。天井の照明はいくつか間引かれ...
ものがたり

【外部】掌編(某所)

「書斎の余白、共犯者の覗き見」(あらすじ)弁護士の夫の書斎で、響子と翻訳家・佐和は、リルケの詩を引用しつつ「性衝動」について語り合う。響子は、佐和の論理で欲望を閉じ込める完璧な「檻」は、崩壊する瞬間の甘美な戦慄を求めていると挑発する。佐和は...
ものがたり

掌編「助け舟」

縁側で日向ぼっこをしながら、まんのすけは気持ちよさそうに目を細めていた。居間から聞こえる義理の姉・ばっしょいと近所の女たちの楽しげな会話に、時折「いや、その話の語源はだね」と口を挟んでは、「まんちゃんは物知りだねえ」と感心されたり、「また始...