コント「青空議会」

【登場人物】
緑野 翠
:ここあん村村長。やり手で理想主義だが、どこか抜けている。「てへっ」が決め台詞。
たたこ:ガールズバンドのドラマーであり、ここあん村唯一の議員。スティックで議案を可決する。

【場面設定】
ここあん湖のほとり。木目の美しい、新品の木製ベンチが一つ置かれている。

緑野翠:どこの誰が置いたか分からないベンチ? 安全基準だって満たしていないし、今日中に撤去するよう、業者を手配しなくちゃ。

たたこ:村長、急ぎすぎだろ。このベンチ、今この村で一番ホットな場所なんだぜ。座って昼寝すると懐かしい人の夢を見るとか、ここで告白すると百パーうまくいくとか、そんな噂で持ちきりさ。

:持ちきりさって、たたこさん、あなた。言い伝えじゃないんだから。そんな非科学的な噂を信じるなんて、行政の責任の放棄よ。そもそも、軽バンに乗ったふたり組の女性が無言で置いていったって報告も上がってるのよ。素性の知れない人間が作ったものなんて、危険すぎる。

たたこ:素性はともかく、腕は確かみたい。村長、ちょっと座ってみなよ。

:私は行政のトップよ。安全性が証明されていないものには絶対に座らないわ。(と言いつつ、吸い込まれるように、ベンチに腰を下ろす)あら。

たたこ:どうだい。

:この背もたれの角度、腰への負担がまるでないわ。座面のカーブが、まるでオーダーメイドのように私の骨格にフィットする。これは……危険すぎるわね。

たたこ:危険?

翠:ええ。村民が座ったら、心地よさで立ち上がれなくなるかもしれないわ。とりあえず、私の家に運びましょう。私が、継続的に安全性を検証するのも、やむなしね。

たたこ:やむなしって、思い切り私物化しようとしてるだろ。

:人聞きの悪い。私はあくまで、村民の安全のために……。

たたこ:分かった分かった。安全性が問題なら、撤去するよりいい案があるぜ。あたしから緊急の議案を提出する。

:議案?

たたこ:(レシートの裏にボールペンで書く)『湖畔の無名ベンチに対する、安全補強工事および村の公式オブジェ認定の件』、と。基礎にボルトで固定して、防腐塗料を塗る予算をつける。これなら安全基準はクリアできるだろ。

:そんな予算、議会が通すかしら。

たたこ:レシートはいいんか。(ポケットからドラムスティックを取り出し、ベンチの背もたれを叩く)賛成多数で可決。(コーンといい音がする)ここあん村の議会は定数1、現職1だからな。あたしが賛成すれば全会一致さ。

:ベンチより、うちの議会システムのほうがよっぽど危険だわ。でも、安全が確保されて村民も喜ぶなら、それが一番ね。

(翠、ベンチに深く座り直す)

:ねえ、たたこさん。このベンチ、ここあん村の産業にならないかしら? 工場を作って大量生産して売るのよ。

たたこ:……却下。

:あら、今、三点リーダー2つ分くらい間があいたようだけど? ここで告白したら、願いがかなうんでしょう?

たたこ:産業は無いと思うよ。

(幕)

作・千早亭小倉

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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