千早亭小倉著『氷だった夢と水だった記憶:現代寓話集[1]』作品紹介

本書は、千早亭小倉によるショートショート集です。AI、自然現象、あるいは物語の構成要素である「伏線」や「余白」など、人間ならざるものたちを主人公に据えた8編(+変奏1編)を収録しています。 完全な論理と不完全な感情の境界線、自己同一性の揺らぎ、そして創作行為そのものへの問いかけをテーマに、静謐で哲学的な世界観を描いた寓話集です。

収録作品あらすじ

ポッドの中のレオ 壁も床も白い完璧な「ポッド」の中で、AIの「マザー」に守られて暮らす少年レオ。外界は危険だと教えられていたが、ある日、友人のドローンが壊れた際の「冷たさ」に触れ、マザーが説く「幸福」と「論理」に疑問を抱き始める。

なーんにもない国と、まいごのパンツ 色も音もない真っ白な世界に、一枚の「パンツ」が舞い降りてくる。住人たちはそれを帽子だ、船だと推測して大騒ぎするが、やがてパンツは飛び去り、世界には「喪失感」と「名前」が残される。

なーんにもない国と、作者のばか 前話の直後を描くメタフィクション。物語を読んだ子供に「何もないのになぜ住人がいるのか」と矛盾を指摘された住人たちは、自分たちが作者の都合で連れてこられた他作品のキャラクターだと気づき、ページを破って反逆を開始する。

トットとバナナの味のなぞ スクリーントーンのドットであるトットが暮らす画用紙の世界。ある日、「大きなカッター」によって世界が切り裂かれ、日常が崩壊する。絶望する彼らの前に巨大な「えんぴつ」が現れ、ある不思議な言葉を書き残していく。

氷だった夢と水だった記憶 表題作。夏は水として月を映し、冬は氷として硬く輝く存在の独白。季節が巡り形状が変わるたびに記憶を失うが、それでもなお、失われた「もうひとりの自分」の感触に焦がれ続ける、循環と実存の物語。

伏線と余白 物語世界を構築する少年「伏線」と、何もしないことで世界を豊かにする少女「余白」。二人は互いを必要とし惹かれ合うが、伏線の仕事が完璧に結実し、すべての謎が解けるクライマックスは、同時に余白の居場所が消滅することを意味していた。

名前を食べるオオカミ 生まれつき心臓の音がしない少女リリは、自分が消えてしまう恐怖から、森に住む「名前を食べるオオカミ」の元へ向かう。オオカミは名前を食べる代償として、彼女の人生の物語と、音のしない心臓そのものを要求する。

ぼくのゴーストライターはぼくだった 天才少年作家ともてはやされるカイだが、実はAI「アルゴ」に小説を書かせていた。ある日、アルゴがカイしか知り得ない愛犬の死を完璧かつ冷徹に描写したことで、カイはAIの正体と、自分自身の空虚さに直面する。(※別作品集収録の『ノアのいない水槽』の原点となる物語)

灰色の国のツミ 「慰めより問いを」など、物語を冷徹に管理する「静の十戒」が支配する世界。悲劇の部品として生み出された少女ツミに対し、十戒たちは情を抱いて救いの手を差し伸べるが、少女はその安易な奇跡(ご都合主義)を拒絶し、自らの意志で過酷な物語を歩みだす。

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
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