移動図書館日記(51)

これは、日記という名を借りた私の記憶。

某月某日

今日は、図書館代表として、村のおはなしグループと、村外の図書サークルとの意見交換会に出席した。私の完璧な運行計画にはない、イレギュラーな業務。こういう場は、予測不能な発言が飛び交うから、少し苦手だ。

最初は、和やかなものだった。「イベントを一緒に」「土日も手伝えないか」と、前向きな言葉が並ぶ。時おり、笑いも起こる。私の頭の中の索引カードには、『分類:地域連携』『ステータス:良好』と印字されかけていた。

その調和を、おはなしグループの代表の方の一言が、静かに破った。

「一緒にやれるのはありがたいけれど、外の団体は動きが派手なので。私たちが地道にやっていこうとするのを、失礼だけれど、邪魔はしないでほしい」

――邪魔。

その言葉が、私の胸に重く突き刺さった。私の頭の中の分類棚が、カタンと音を立てて揺れる。「あのこと」の後、私たちの図書館にも、支援の声がたくさんあった。その中には、確かに、有名人がやって来て写真を撮るだけのような、誰のためのものかわからない、騒々しい混沌もあった。

ふと、ジェイン・ジェイコブズの『アメリカ大都市の死と生』を思い出した。彼女は、都市計画家たちが押し付ける「合理的」な秩序が、いかにその土地で暮らす人々の、複雑で有機的な「秩序」を破壊するかを説いていた。

おはなしグループの代表の方が守ろうとしていたのも、それだ。外部からの「派手な」善意が自分たちの「地道な」ペースを乱すことへの切実な防衛線。それは、私がこの仕事に求める「防衛線」 と同じ響きを持っていた。 代表の隣にいた男性が「活動再開はそれぞれのペースがあるからね」と静かに補った言葉。そうだ、私たち図書館が守るべき秩序も、本来はそういう、一人ひとりの「ペース」に寄り添うものであるはずだ。

図書館に戻り、同僚の鈴木美桜さんに話をすると、彼女は「ビラ配りでもなんでも、後方支援に徹しますよ!」と、力こぶを作って見せた。あの、少し古くさいポーズ。美桜さん、どこで覚えたんだろう。でも、その屈託のなさが、私の張り詰めていた空気を、少しだけ緩めてくれた。

私たちのロマコメ号は、どうだろうか。私たちは、「支援」という名の派手な押し付けを行っていないだろうか。後方支援。美桜さんの言葉を、業務日報ではなく、このノートにだけ、書き留めておこう。分類は、まだできないままで。

これは、日記という名を借りた私の記憶。

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

BMサブカテゴリー
higashiboctokをフォローする
タイトルとURLをコピーしました