WORKS<千早亭小倉の作品>

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大人のための寓話「広場の隅のからくり時計」

町の広場の真ん中に、そのからくり時計は立っていた。今も、昔も、まったく同じ場所に。その時計は、毎日正午に開かれる小さな舞踏会の主催者だった。時計からワルツが流れ出すや、広場そのものが陽光の降り注ぐ舞踏室に変わり、誰もがその優雅な音色に引き寄...
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大人のための寓話「嘘の色」

最初に嘘の色が見えるようになったのは、いくつのときだっただろう。物心ついた頃にはもう、人の言葉には時々、奇妙な色がまとわりついていた。世界は、私にとって四つの色でできていた。ひとつめは、まっしろ。母が私の拙い絵を見て「まあ、上手ね」と言った...
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大人のための寓話「静かな世界」

SNSは不夜城。祭りの会場では誰もが仮面をつけ、自分の心の奥底にあるものを、いつでも好きなときにありったけ叫ぶことができた。愛の詩、呪いの言葉、くだらない冗談、すべてがごちゃ混ぜになって、熱気を帯びた渦を巻いていた。誰もが叫び、誰もが指差し...
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大人のための寓話「ささやく果実」

世界の錆びついた蝶番のような丘の上に、その樹は一本、立っていた。誰が植えたのか、いつからそこに在るのか、誰も知らない。ただ、その枝には年に一度だけ、磨き上げられた琥珀の中に小さな太陽が閉じ込められているかのような果実が、たったひとつだけ実っ...
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千早亭小倉著『移動図書館のものがたり』

本書は、東日本大震災の被災地を巡回した「移動図書館」を共通のモチーフに描かれた、三編の物語からなる短編集です。深い悲しみと喪失を扱う「寓話」、仮設住宅で暮らす少女の視点から描かれる「回想録」、そして十数年後の再会を描く「現代小説」。それぞれ...