[掌編]話の脇道

[掌編]話の脇道

掌編「泥の塔」

エレベーターホールの床に、乾いてひび割れた泥の染みが、所在なく広がっていた。どこかの階の子供が運んだ植木鉢からこぼれたものか、あるいは、もっと別の、緑野翠村長の知らない生活の痕跡か。天井の照明はいくつか間引かれ、ホール全体が夕暮れ時ほどの薄...
[掌編]話の脇道

【外部】掌編(中野あやね/氷上冬子)

「無名」(あらすじ)あやねと冬子は、車の轍が途絶えた森の奥にある湯治場を訪れる。そこで出される料理は、どの野菜とも一致しない「名も知れぬ」ものばかり。二人は戸惑いながらも食事を進めるうち、胃の腑に熱が灯り、身体が根っこから喜ぶような静かな充...
[掌編]話の脇道

【外部】掌編(某所)

「書斎の余白、共犯者の覗き見」(あらすじ)弁護士の夫の書斎で、響子と翻訳家・佐和は、リルケの詩を引用しつつ「性衝動」について語り合う。響子は、佐和の論理で欲望を閉じ込める完璧な「檻」は、崩壊する瞬間の甘美な戦慄を求めていると挑発する。佐和は...
[掌編]話の脇道

掌編「助け舟」

縁側で日向ぼっこをしながら、まんのすけは気持ちよさそうに目を細めていた。居間から聞こえる義理の姉・ばっしょいと近所の女たちの楽しげな会話に、時折「いや、その話の語源はだね」と口を挟んでは、「まんちゃんは物知りだねえ」と感心されたり、「また始...
[掌編]話の脇道

千早亭小倉著『あるある「飲み屋のママはいくつの言葉で店を回せるか問題/死んだクジラの腹のような空 他」(コンセプト・ハイ)』

本作は、言葉の定義の曖昧さや、AIによる情報の捏造ハルシネーション、創作活動における不条理などを題材にした、メタフィクション的なショートショート集の第三弾です。「一時間弱」の解釈に揺れる図書館員や、AIの仕様に作品を書き換えられる作家など、...