万歳三唱の咆哮とともに、議場は「物理的」に崩壊した。首相の解散宣言は強力な分解酵素となり、議員たちはスーツもろとも極彩色の液体へと姿を変えたのだ。これぞ真の解散総選挙である。
液体化した候補者たちは、排水溝を伝い、全国の家庭の蛇口へと忍び込む。「清き一滴を!」と叫びながらコップに注がれる彼らを、有権者は容赦なく飲み干す。
胃の中で審判が下される。公約が嘘なら激しい胃もたれを起こし、誠実であれば五臓六腑に染み渡る。有権者の体内で「濾過」され、汗や涙として排出された成分だけが、再び議場へと集まり、人間の形を再構成できるのだ。
数週間後。再集結した議員たちは皆、驚くほど透き通るような肌をしていた。
「次は、もう少しコクのある政策を練りましょう」
そう語る首相の足元は、まだ少しだけ、水のようによろめいていた。
(了)
作・円城寺奏
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