箱庭小説

ものがたり

掌編「三グラムの投函」

――三グラム。定形郵便の規定である二十五グラムを大きく下回るその重さを、五年間配達鞄を提げてきた男の指先は正確に計量していた。小名地区の路地裏に建つ音巴里荘は、無計画な増改築を繰り返した結果、一階に集合ポストを置くスペースすら失っている。配...
ものがたり

掌編「歌の人(2)」

池袋から数分、幻の椎名町三丁目から広がる架空の村「ここあん村」の記録。千早亭小倉による掌編、コント、移動図書館の活動日記を掲載。
ものがたり

掌編「歌の人(1)」

池袋から数分、幻の椎名町三丁目から広がる架空の村「ここあん村」の記録。千早亭小倉による掌編、コント、移動図書館の活動日記を掲載。
ものがたり

掌編「寄港地の午後」

六月の光は、ブックカフェ『シズカ』の床に、気の早い夏の気配を運んでいた。レコードプレーヤーの針が拾う、かすかなノイズの向こう側で、一音一音、次に置くべき響きを確かめるような、思慮深いピアノが流れている。その静かな余韻に寄りかかるように、乾い...
ものがたり

ショートショート「ここあんタワー竣工式」

これはまだ、ここあん村が「あのこと」を経験するずっと前のこと。静寂の中、ここあん村長の緑野翠が壇上に立つ。ビリジアンのドレスが、朝日に映える。彼女は、ゆっくりと息を吸い込み、そして――。「村長の緑野翠でございます。上から読んでもミドリノミド...