2026-04

スポット

ここあんの森

都市の喧騒が遠い残響となって消え去り、アスファルトが途切れて土の匂いが立ち始めるここあん村のはずれ。そこから広がるのが「ここあんの森」です。せわしない日常とは異なる時間が流れる特別な場所であり、近年その一部が切り開かれて復興住宅地「ボストー...
ものがたり

掌編「焚くは落ち葉か筑前煮」

これはまだ、真田まるが「ものがたり屋」を開く前のこと。彼女とおはぎはんが、互いにフリーの取材ライターとしてここあん村を駆け回り、まだ「盾と槍」という運命のバディになる少し前の物語――。ここあん村の金曜の夜は、いつもより少しだけ浮かれた空気が...
ものがたり

掌編「割れない鏡」

アスファルトが八月の陽光を照り返している。東風公園応急仮設住宅の集会所。首を振る扇風機の音と、数人の子供の声。それ以外は沈黙だった。氷上静はパイプ椅子に浅く腰掛け、その沈黙の中にいた。ここあん村を襲った「あのこと」から数年。母の冬子に連れら...
ものがたり

掌編「深夜の猿哲学」

深夜の編集プロダクション「ぽんちょ」。コピー機の微かな駆動音だけが響くオフィスで、学生アルバイトの恋流波陽こひるははるは、一人でゲラの山と格闘していた。「……終わらない」小さくため息をつき、首を回した時だった。「お疲れ様、はるくん」給湯室の...
ものがたり

移動図書館日記(107)遠野編

これは、日記の名を借りた、中野文の記憶。千夏さんと車を走らせ、峠を抜けて沿岸部へと出た。かつては車窓からきらきらと光る波頭が見えた道も、今は巨大なコンクリートの壁に阻まれている。車を停め、目の前にそびえる灰色の防潮堤を見上げたとき、千夏さん...