1. 思考のタフォノミー

思考の断片が、揮発性の有機化合物のごとく拡散していく。これを何らかの形で定着させる必要性を感じた。S教授に提出するレポートとは別の、私的な地層として。

化石とは、奇跡的な条件が重なって形成された、過去の生態系の記録体だ。地球上の生物の99%以上は、痕跡すら残さず堆積物の中に溶解し、プレートの沈み込みと共にマントルへ還っていく。私の脳内に生成と消滅を繰り返す思考も、その大部分は記録されることなく、次の神経インパルスのためのエネルギーに再利用されて終わる。いわば、生痕化石にすらなれない存在だ。

このノートは、私の思考の「特異な保存」を試みる実験なのかもしれない。バージェス頁岩のように、通常では残り得ない「軟体部」――すなわち、結論に至る前の、とりとめのない連想や問いそのものを保存するための場所。

この試みがどのような堆積パターンを描くのか。未来の私がこの記録を発掘したとき、そこに何らかの示準化石を見出すことはできるだろうか。まずは、観測を始めることにする。

環奈への手紙
環奈への手紙(1)

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
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化野環「古生物学小日記」
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