千早亭小倉著『移動図書館のものがたり』

本書は、東日本大震災の被災地を巡回した「移動図書館」を共通のモチーフに描かれた、三編の物語からなる短編集です。深い悲しみと喪失を扱う「寓話」、仮設住宅で暮らす少女の視点から描かれる「回想録」、そして十数年後の再会を描く「現代小説」。それぞれ異なる文体とアプローチで、震災後の時間と、本がつなぐ心の交流を描き出しています。

収録作品あらすじ

かなしみのふた 深い青い海の底で目覚めた、小さな移動図書館車「かんた」の物語。
ひとりぼっちのかんたは、同じく水底に沈んだお母さん図書館車や、自転車に乗ってやってくる男の子と出会います。ある日、かんたは決して自分からは開けてはいけない「かなしみのふた」を見つけます。死と再生、あるいは魂の救済を、擬人化された車の視点から優しく幻想的に描いたファンタジーです。

おひさま 仮設住宅で祖母と暮らす少女「わたし」の視点で描かれる、移動図書館との交流の記録。
少女は、毎週土曜日にやってくる移動図書館の運転手「青い帽子のおじさん」に特別な親しみを感じています。亡き母の声が流れる図書館車、おじさんとの他愛のない会話、そして別れ。被災地の日常を、子どもの無垢な視点を通して温かく、そして少し切なく切り取っています。

なみにふれる日 震災から十数年後を舞台にした、大人のための物語。
かつて移動図書館のボランティアとして被災地に通っていた女性・ふみは、久しぶりにその町を訪れ、当時高校生だった少年・うみと再会します。喫茶店でのぎこちない会話の中で、文は過去に自分が犯した(と思い込んでいる)ある少女への言葉の暴力と向き合うことになります。記憶の風化と、それでも消えない「わだかまり」が氷解する一瞬を描きます。

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(補足情報:各話の関係性について) これら三編は独立した物語ですが、緩やかにリンクしています。『おひさま』に登場する「青い帽子のおじさん」は、実在のモデルあるいは共通のキャラクターとして、『なみにふれる日』でもその存在(と著作)が言及されます。また、『かなしみのふた』で描かれる水底の世界は、他の二編の背景にある「津波による喪失」を寓話的に昇華させたものと読むことができます。

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
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