箱庭小説

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つぶやき(小春と静)

小春「このマグの欠けたところ、私の指の形にちょうど合うんだ」静「それは君がカップの形状に合わせて指を置いているだけだ。器の側に意志はない」小春「えー、合わせてくれてるなら、やさしくていいなって思ったんだよね」
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寄稿「水底で濾過される太陽――エリュアールの不在と共鳴」

あるいは 「深海の月光と、逆行するサガン」として向原佐和(ドイツ文学翻訳)木々の深い吐息が淀む、ここあん村。偶然足を踏み入れたここあん図書館の、冷え切った空気を静かに肺の奥へと吸い込む。整然と並ぶ書架の背表紙を指の腹でなぞっていくうち、ふと...
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環奈への手紙

アンバーの遮光瓶を棚に戻し、指先に残ったベチバーの根の土臭さを静かに吸い込む。湿った土壌の香りは、神経のささくれを均すのに都合がいい。作業台の端に置いたタブレットの画面が、静かなアトリエの空気を白く切り取っている。植物の化学組成について調べ...
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移動図書館日記(87)

これは、日記という名を借りた私の記憶。――「主任 菜箸千夏」。主任という新しいラベルが、まだ糊の乾ききっていない付箋のように、私の胸元で少しだけ浮いている。一人で背負っていた書架の重みを、今はチームという丈夫な箱に分けて収めている。二階のガ...
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図書館長より職員のみなさんへ

「段階的開放に伴う業務指針と、移動図書館の役割再定義について」高島雅也皆さん、おはようございます。ここあん村立芸術図書館は、三年間にわたる「完全閉鎖」という異常事態に終止符を打ち、一階および二階の一部を村民に開放しました。まず、今日という日...