第1話「書庫とモツ煮込み」
【登場人物】
武功:気取った文章を憎む作家。
霧崎 譲二:寡黙な作家。
【スポット】
ここあん大学の早稲田サテライトキャンパス(日本文学科棟)の最奥に位置する、日光を拒絶した「開かずの古書庫」。
導入:雨漏りの水滴がバケツに落ちる音が響く無尽蔵。武功と霧崎が、古い文芸誌の束を漁っている。武功は埃とカビの匂いに文句を言いながら乱暴に本を扱い、霧崎は無言でページをめくっている。
展開:武功が、徒然士の字で書かれた「孤独の羽ばたきと蒼き涙」という題名の詩のメモを見つける。武功は「こんな気取った文章は紙の無駄だ」と激怒し、メモを丸めて窓から投げ捨てようとする。
その瞬間、霧崎が武功の手首を強く掴む。霧崎の視線は、メモの裏面に釘付けになっていた。そこには「酒場ボストーク特製モツ煮込み・大盛り無料券(本日有効)」と印刷されていた。
寡黙な霧崎が「俺がもらう」とだけ口を開く。武功は「ふざけるな。俺の行きつけの店だ」と反発し、無料券を巡って二人の初老の作家が真剣な顔で取っ組み合いを始める。
結末:武功があえて不利な体勢から無料券を強く引く。紙は真ん中で真っ二つに破れる。
二人は破れた紙切れを手に持ったまま立ち尽くす。足元を大きなカマドウマが跳ねていく。
武功が「これぞ完璧な敗北だ」と大声で笑い出す。霧崎は破れた半分の無料券を丁寧に財布にしまい、自腹でモツ煮込みを食べるために足早に書庫を出ていく。武功も慌ててその後を追う。
第2話「楽譜の計算式と苺タルト」
【登場人物】
新浪 いちご:論理を重んじる元天才研究員。
米山 共子:情熱的で厳格なピアノ教師。
【スポット】
ここあん図書館が保有する、白い図書館車(通称:名無し君)
導入:移動図書館の車内。いちごが分厚いクラシックの楽譜を開き、音符の配列を数式として計算している。そこへ共子が乗車する。共子はいちごが熱心に楽譜を読んでいると勘違いし、才能を見出した演出家としての表情を浮かべて近づく。
展開:共子が「音楽は魂の爆発よ。もっと楽譜の裏にある血の涙を感じなさい」と大仰な身振りで語りかける。いちごは「音はただの波長と周波数の羅列です。涙の成分は塩化ナトリウムと水であり、音響には無関係です」と即座に論破する。共子は自身の指導を否定されてプライドを刺激される。「静寂の中で情熱を燃やし、氷のように熱く弾くのよ」と、さらに矛盾した比喩を大声で連発する。いちごは計算の合わない矛盾した指示を受け、エラーを起こした機械のように首を傾げる。
結末:車外から、村の移動ケーキ屋の到着を知らせるチャイムが鳴る。共子は突然口を閉じ、「本日の限定苺タルトを買い逃すわけにはいかないわ」と言い残し、血相を変えて車を飛び出す。いちごの脳内で「ケーキの甘味」という情報が論理のプログラムを強制終了させる。いちごは楽譜を本棚に放り込み、無表情のまま猛スピードで共子の後を追って走り出す。
第3話「復讐のコード進行と筑前煮」
【登場人物】
影山 巧:恩師への復讐を企む作曲家志望。
高橋 あゆみ:昭和歌謡マニアのラジオDJ。
【スポット】
居酒屋「ここきた」
導入:居酒屋「ここきた」のカウンター席。巧が復讐計画を記したノートを開き、恩師を破滅させるための手順を小声でつぶやく。隣の席では、あゆみが名物の筑前煮を食べながら古い音楽雑誌を読んでいる。壁には色褪せた自主映画のポスターが貼られている。
展開:巧が「あの女を絶望させる完璧な不協和音だ」と言い、スマートフォンの作曲アプリで自作の重苦しい曲を再生する。それを聞いたあゆみが突然雑誌を閉じる。あゆみは「1979年のムード歌謡『湯けむり未練酒』のサビと全く同じコード進行です」と冷静に指摘する。巧は「これは地獄の底から響くレクイエムだ」と激しく反発する。あゆみの昭和歌謡マニアとしてのスイッチが入る。あゆみは立ち上がり、こぶしを効かせて『湯けむり未練酒』を全力で熱唱し始める。巧は負けじとアプリの音量を最大にして対抗する。
結末:厨房から、ママが新しい筑前煮の大鍋を運んでくる。醤油と出汁の濃厚な香りが二人の鼻を直撃する。巧の手からスマートフォンが滑り落ちる。あゆみも歌うのをやめ、静かに席に座る。巧は「完璧な復讐には、まず完璧な栄養が必要だ」と言い訳をする。二人は先ほどの口論を完全に忘れ、無言で大盛りの筑前煮をかき込む。

(第4話に続く)作・Gemini+NotebookLM 編集補・千早亭小倉
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