2026-03

ものがたり

1. 思考のタフォノミー

日常に潜む「地層」と「化石」を見つける思考の実験。ある古生物学徒の視点で綴られた、世界を新たな解像度で切り取るための思索的な日記。「見ること」の本当の意味を問い直す、記録の断片をお楽しみください。構成・千早亭小倉
ものがたり

環奈への手紙(1)

「思考のタフォノミー」……。死を、単なる終わりではなく「記録へのプロセス」として捉えるあなたの視点は、あなたが環奈だとするなら、相変わらず冷たくて、そしてゾッとするほど美しい。あなたが書いた「揮発性の有機化合物」という言葉。調香師である私に...
ものがたり

移動図書館日記(88)

これは、日記という名を借りた私の記憶。三月。窓を少しだけ開けると、冬の名残を含んだ冷たい風が、本館の真新しいカウンターをさっとなでていった。外では、児童担当の北条くんが子どもたちを追いかけて、春の光のような明るい声を響かせている。その様子を...
ものがたり

掌編「エスの心細さ」

学バス「さやかっくす」の揺れは、いつも規則性がなくて、胃のあたりを不快にさせる。窓の外には、垂直に移設された校舎が、無意味な巨大な墓標みたいに立っている。僕はリリカさんの真後ろの席から、彼女が読んでいる雑誌を覗き込んだ。ここあん高校の同人誌...
ものがたり

つぶやき(小春と静)

小春「このマグの欠けたところ、私の指の形にちょうど合うんだ」静「それは君がカップの形状に合わせて指を置いているだけだ。器の側に意志はない」小春「えー、合わせてくれてるなら、やさしくていいなって思ったんだよね」