コント「鶏とさばの運命的な何か」

登場人物
カート
:ここあん高校の生徒。金髪で中性的な美少年だが、なぜか常に宇宙的な不条理に巻き込まれ、それを淡々と受け入れている。
ケニー:ここあん高校の生徒。地味な文学少年。カート・ヴォネガットを敬愛しており、世界の不条理を(書物を通じて)理解し、静かに諦観している。

場面設定
昼休みの、ここあん高校の学食。入口に、「Aランチ:鶏の唐揚げ定食」「Bランチ:サバの味噌煮定食」の札が下がっている。そこそこ混雑している。

(学食の券売機の前で、カートが「Aランチ」の食券を買い、カウンターに出す)

カート:Aランチ、お願いします。

(番号を呼ばれたカートが、カウンターで何か言いかけるが、結局、トレイを持って席を探す。カートは、窓際のケニーがテーブル席で文庫本を読みながら静かにパンをかじっているのを見つける)

カート:(ケニーの向かいにそっと座る)やあ、ケニー。

ケニー:(文庫本から顔を上げ、小さく会釈する)……ああ、カート。

(カート、自分のトレイに目を落とす。そこには、湯気を立てる「サバの味噌煮」が鎮座している)

ケニー:(視線を感じ、カートのトレイに目をやる。サバの味噌煮と、カートの顔を交互に見る)……サバにしたんだね。

カート:う、うん。(フォークも箸もなく、なぜかデザート用の小さなスプーンが添えられていることに気づく)……みたいだ。

ケニー:みたいだ? もしかして、Aランチの唐揚げを頼んだつもりだった?

カート:うん。(カウンターのほうをちらりと見る。学食のスタッフが、鬼の形相で次の客に対応している。行列を捌くのに必死そう)

ケニー:……言ってきたらどう? 食券の半券あるかい?

カート:ああ。(制服のポケットを探るが、食券は見当たらない。代わりに、なぜか昨日の日付の映画の半券が出てくる)……ないや。

ケニー:……そうなんだ。

(カート、小さなスプーンを手に取り、サバの味噌煮の、その分厚い身をどう攻略するか、数秒考える)

ケニー:……ヴォネガットの『タイタンの妖女』に、マラカイ・コンスタントっていう大富豪が出てくるんだ。

カート:(スプーンでサバの身をほぐそうと試みながら)うん。

ケニー:彼は、全宇宙を巡る壮大な旅の末、火星人の記憶を消され、水星の洞窟でコケを食べ、最後はタイタンで地球からのメッセージを待つだけの存在になるんだ。

カート:へえ。(サバの皮がうまく切れず、スプーンが滑る)

ケニー:彼が失ったものに比べれば、唐揚げを失うことは……まあ、些細なことかもしれない。

カート:そうかもね。(サバの身ではなく、横に添えられた大根おろしに狙いを定め、スプーンですくって口に運ぶ)……うん、味は悪くない。

ケニー:それは良かった。

(カート、再びサバの本体にスプーンで挑む。ケニーは、そんなカートの姿をじっと見つめている)

ケニー:……もしかしたら、そのサバは、君が食べる運命だったのかもしれない。宇宙の意志が、君に唐揚げではなくサバを与えることを、ビッグバンの瞬間に決定していたんだ。

カート:(ようやくサバの身を少しだけスプーンに乗せることに成功する)……そっか。じゃあ、しょうがないね。

ケニー:ああ。しょうがない。

(カート、サバを一口食べる。ケニーは文庫本に視線を戻す。学食の喧騒の中、二人のテーブルだけ、静かな諦観の空気が流れている)

(幕)

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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