ブックカフェ

ものがたり一覧

掌編「呼吸」

休日の夜、ブックカフェ「シズカ」の二階にある居住スペースは、静謐な空気に包まれていた。一階の店舗の明かりはすでに落ち、外の喧騒もここまで届くことはない。壁掛けのテレビからは、くぐもった爆発音が響いていた。画面の中では、無精髭を生やした男が、...
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掌編「槍と盾、湖畔にて」

湖を渡る風が、岸辺の葦を乾いた音で揺らしている。その微かな摩擦音に重なるように、二つの足音がブックカフェ『シズカ』へと続く小径を刻んでいた。一つは、弾むような、それでいてどこか危うい性急なリズム。もう一つは、その数歩後ろを歩く、湿った土を静...
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「物語の寄港地」シリーズ

劇的な事件や騒がしい展開はありません。一冊の本を通じて過去と向き合い、自分自身を整えていく、穏やかで誠実な交流が綴られます。人生の途上でふと立ち寄る、寄港地のような温かさと静寂に満ちた掌編シリーズです。小春が本を直し、静が客の言葉に耳を傾け...
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スケッチ「がたがたいうテーブル」

湖畔のブックカフェを舞台に、哲学者と翻訳家が「理想的な対話」の可能性を論じる。ハーバーマスの死をきっかけに揺らぐ理性と、不完全な世界で正気を保つための知的なやり取りを切り取ったショートストーリー。
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コント「赤い糸の窓」

【登場人物】中野小春(35):ブックカフェの店主。使い込まれたものを直して使うのが好き。空野円(34):大学講師。物事に執着せず、移ろいゆく様子を眺めている。【場面設定】午後の陽が差し込むブックカフェ「シズカ」。カウンターで小春が穴のあいた...