常磐荘

箱庭小説

掌編「夏風邪のダバダ」

午前四時。常盤荘の外階段の最上段で、朝霧沙緒はコンクリートに直に座っていた。素肌の上に羽織った綿のシャツの隙間から、冷たい風が入り込む。ライターのフリントを擦り、煙草に火をつける。息を吸い込み、吐き出すと、外灯の光の中で煙が白く広がった。沙...
箱庭小説

掌編「常磐荘綺談」

ジッポーのキシンッという金属音が響いた。湿った苔と冷え始めた土の匂いを、オイルがたちまち上書きする。安煙草の紫煙が囁くように耳元を通り過ぎても、鴨下栞は振り返らなかった。この石階段は栞の観測所だが、同時に、後ろにいるたたこの指定喫煙所でもあ...