7. 欠落環の修復師たち

昼食時の食堂は、雑多な音の堆積場だ。食器の触れ合う音、人々の会話、そして壁掛けテレビから流される、情報番組の音声。ある人物の私生活に関するスキャンダルが、その日の主要な議題らしかった。

テレビの中の人々は、非常に限られた情報――おそらくは数枚の写真と匿名の証言という、風化の激しい化石断片だけを頼りに、その人物の行動原理から人格に至るまでを、驚くほど滑らかに「復元」していく。彼らの口調は断定的で、まるで完全な骨格標本が目の前にあるかのようだ。

古生物学において、復元図の作製は最も慎重を要する作業の一つだ。発見された骨格に基づき、筋肉の付着痕を分析し、現生のアナログ種と比較検討を重ねる。それでもなお、皮膚の色や模様、鳴き声といった、化石記録に残り得ない情報の多くは「科学的推定に基づく想像」の域を出ない。我々は、その不確実性を常に留保する。

しかし、彼らは違う。情報の欠落部分、すなわちミッシングリンクを、臆測という名の極めて可塑性の高い素材で瞬時に埋めていく。まるで、不完全な状態に耐えられないかのように。人々は、断片的で複雑な真実よりも、多少強引であっても一貫性のある物語を求める傾向がある。その需要に応える彼らは、いわば大衆心理の空白を埋める、手際の良すぎる修復師だ。

その行為は、対象の人格という複雑な生態系を、非常に貧弱なものへと単純化してしまう。私は、食べ終えたアジフライの、見事に残った骨格を見つめていた。この完璧に近い骨格標本ですら、この魚が生きていた時の遊泳速度や、捕食行動の癖までは教えてくれない。

テレビの音声が遠のいていく。

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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化野環「古生物学小日記」
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