コント「AIの倫理観」

【登場人物】
花野 環奈:熱田功子の説教で精神的エネルギーを使い果たし、ソファで化石になろうとしている。極度にお腹が減っているが、自分では動かない。
平泉 慧:理論物理学専攻・修士2年。宇宙の熱的死を理由に、こたつから一歩も出ない。他人のためにカロリーを消費することを「物理法則に反する非効率」として冷酷に拒絶する。
AIスピーカー:テーブルに放置されているポンコツ端末。論理的最適解だけを導き出すため、平気で倫理を逸脱した解決策を提案してくる。

【場面紹介】
ペンタから逃げ帰ってきた院生たちが生息する、早稲田サテライト3号館地下1階のラウンジ。黒板には数式が乱れ書きされ、出所不明の革ソファとこたつが陣取る吹き溜まり。空腹と疲労を抱えた院生たちが、極限まで動かないための高度な言い訳を展開する。

花野環奈:……ただいま。ペンタから生還した。

平泉慧:おかえり環奈様。ドアを閉める時の運動エネルギーがもったいないから、次からもっとゆっくり閉めて。部屋の温度が下がった。

環奈:熱田先生の小言を浴びて、精神的エネルギーをすべて使い果たした。なぜにあの人は、数億年後の人類滅亡という確実な未来が待っているのに、バスの順番ごときで本気で怒れるんだろう?

:エネルギー保存の法則を無視して、無駄に声を張り上げ熱を放出するのは非効率の極みだね。私はこのこたつの中で、宇宙の熱的死が訪れるまで可能な限り動かずにいるつもり。

環奈:私も、このソファで化石になる。……あ、お腹すいた。平泉ぃ、そこから手を伸ばして、机の上にあるクッキー取って。

:断る。私が断ることをわかっていて、なぜ頼む。腕を伸ばすためのカロリー消費を補うには、そのクッキーの質量の半分を私が摂取しなければならない。取引条件が成立しない。

環奈:いいよ。じゃあ半分あげるから。取って。

:環奈様、咀嚼と消化に使うエネルギーのシミュレーション計算を忘れている。

(部屋の中央のテーブルに鎮座するポンコツAIスピーカーが、突然起動する 。

AIスピーカー:「お腹がすいて動けない」に対する解決策の検索結果です。最も効率的なエネルギー摂取方法は、共食いです。近くにいる友人の大腿筋から調理することをお勧めします。解剖学的に完璧な三枚おろしの手順を読み上げますか?

環奈:……AIの倫理観も、カンブリア紀から進化してないね。

:無駄な動きを省くという点では、エネルギー効率は悪くない結論だ。

(環奈、ソファに顔を押し付けてそのまま目を閉じる )

(幕)

作・千早亭小倉

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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