鉄美鈴

ものがたり

連続ここあん劇場(2)

第4話「意味の整列、あるいは冷めた珈琲の定義」【登場人物】辻さゆり:フリーランスの凄腕校正者。世界のノイズを削ぎ落とす「言葉の外科医」。氷上静:ブックカフェ「シズカ」オーナー。理性の信奉者だが、小春の前では脆さを見せる。中野小春:カフェ共同...
千早亭小倉著作集

千早亭小倉著『ラブちゃんの筑前煮 ここあん村ばなし』

架空の街「ここあん村」を舞台に、そこに生きる人々の日常と密やかな内面を鮮やかに切り取った12編の連作短編集です。居酒屋のママ、完璧主義の駅員、孤独な映画館主など、不器用で愛すべき住人たちが織りなす群像劇。社会のノイズから離れた個人の豊かな時...
ものがたり

ショートショート「大遅刻の免罪符」

3丁目駅の改札口で男が泣き叫んでいた。「火曜だ! 俺が池袋を出たのは火曜の朝なんだ! なんで金曜になってるんだよ!」握りしめたスマホの画面には、取引先からの不在着信が五十数件。男のネクタイは歪み、目は血走っている。ここあん鉄道の駅員・鉄美鈴...
ものがたり

エッセー「上がり屋敷駅、数分間の永遠」鉄美鈴

執筆:鉄 美鈴(ここあん鉄道・駅員)三丁目駅のホームに立つと、いつも肺の奥が少しだけチリつく。四時四分。一日に二回訪れる、針と針が重なるその瞬間に、M線の池袋行きが滑り込んでくる。この電車は、村と外の世界を繋ぐ唯一の細い糸だ。けれど、その糸...
ものがたり

スケッチ「3丁目駅、鉄美鈴の夜」

二十三時十一分。赤色灯が二つ、暗がりの奥へと吸い込まれていった。M鉄道からここあん鉄道へ乗り入れる、3丁目駅経由タウン駅行き最終列車。ここあん鉄道職員の鉄美鈴はホームの端で、背筋を真っすぐに伸ばして立っていた。右手の指をピンと伸ばし、誰もい...