移動図書館

箱庭小説

移動図書館日記(90)

これは、日記という名を借りた私の記憶。ロマコメ号の受付に、少し息を切らせておかあさんがやってきた。この前お渡しした色鮮やかな漬け物の本を、ぽんとカウンターに置く。「これ、目が痛くなるくらい読んだよ。いつか、かあさんを連れてくるわ」短い言葉の...
箱庭小説

移動図書館日記(89)

これは、日記という名を借りた私の記憶。朝、本館のカウンターで坂上さんが大きなポットの蓋をカチッと閉める音が響く。「千夏さん、今日はこのお茶で温まってね」立ち上る湯気と一緒に、坂上さんの庭で摘んだという草の香りが事務室に広がった。隣では児童担...
箱庭小説

移動図書館日記(88)

これは、日記という名を借りた私の記憶。三月。窓を少しだけ開けると、冬の名残を含んだ冷たい風が、本館の真新しいカウンターをさっとなでていった。外では、児童担当の北条くんが子どもたちを追いかけて、春の光のような明るい声を響かせている。その様子を...
箱庭小説

移動図書館日記(87)

これは、日記という名を借りた私の記憶。――「主任 菜箸千夏」。主任という新しいラベルが、まだ糊の乾ききっていない付箋のように、私の胸元で少しだけ浮いている。一人で背負っていた書架の重みを、今はチームという丈夫な箱に分けて収めている。二階のガ...
箱庭小説

移動図書館日記(86)

図書館の開放と新しい座標移動図書館司書・菜箸千夏の日記。三年ぶりの図書館建物開放。開架フロアの復活という奇跡と、本館を補完し能動的に無秩序な現実に寄り添うロマコメ号の新たな役割への力強い決意。[移動図書館/図書館再開/未来]