移動図書館

箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(92)

この村で生きる決意/移動図書館司書・菜箸千夏の日記。この村の空が落ち着くからと、最後まで暮らす決意を語る女性。魔法は使えなくとも、今日読みたい一冊を手渡すことで、ここで生きる人々の日常を静かに支えたいという祈り。[移動図書館/復興/日常の支え]
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(91)

霧の記録と知る自由/移動図書館司書・菜箸千夏の日記。子どもたちの文集と、村を覆った霧の真実を知りたがる女性。読者を傷つけることを恐れ関連本を避けていた己の判断を見直し、事実を届ける覚悟を決める。[移動図書館/記録/司書の役割]
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(90)

これは、日記という名を借りた私の記憶。ロマコメ号の受付に、少し息を切らせておかあさんがやってきた。この前お渡しした色鮮やかな漬け物の本を、ぽんとカウンターに置く。「これ、目が痛くなるくらい読んだよ。いつか、かあさんを連れてくるわ」短い言葉の...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(89)

これは、日記という名を借りた私の記憶。朝、本館のカウンターで坂上さんが大きなポットの蓋をカチッと閉める音が響く。「千夏さん、今日はこのお茶で温まってね」立ち上る湯気と一緒に、坂上さんの庭で摘んだという草の香りが事務室に広がった。隣では児童担...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(88)

これは、日記という名を借りた私の記憶。三月。窓を少しだけ開けると、冬の名残を含んだ冷たい風が、本館の真新しいカウンターをさっとなでていった。外では、児童担当の北条くんが子どもたちを追いかけて、春の光のような明るい声を響かせている。その様子を...