箱庭小説

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「深海と太陽、交差する応接室」

『水底に差す月光の輝きをキミはまだ知らない。』において、論理の鎧を纏う大学講師・氷上静と、彼女の孤独な世界に迷い込んだ学生・恋流波陽(はる)が繰り広げた、平均台を駆け抜けるような危うい疑似恋愛。本作は、その関係が不器用な形で破綻した後の出来...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「寄港地の名前」|「物語の寄港地」シリーズ

ここあん村・寄港地シリーズ。閉店後のブックカフェ「シズカ」で、氷上静は店名を「寄港地」へ改称したいと中野小春に持ちかける。訪れる者が錨を下ろす場にふさわしいという静の論理に対し、小春は染みついた時間を大切に育てたいと微笑む。二人の絆が深まる、穏やかで優しい対話の物語。
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「覚醒する分度器」

「浅い。絶望的に浅いわ」黒崎文は原稿の束を長机に投げ捨てた。滑った紙の束が、神崎一樹の肘を叩く。「ホームから涙ぐんで見上げる彼女を、真っ直ぐ見つめ返す? 言葉の上澄みだけをすくったような薄っぺらい感傷。別れ際にこんな綺麗な絵面になるわけない...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「模擬面接バス」

霧に濡れた路面が、タイヤを介して微かな震動を伝えてくる。さやかっくすは指先に力を込めず、掌の皮一枚でその震えを読み取った。自身の神経が、ステアリングのシャフトを通って路面にまで伸びている感覚。彼女にとって、己の筋肉と神経を制御下に置くことは...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「焚くは落ち葉か筑前煮」

これはまだ、真田まるが「ものがたり屋」を開く前のこと。彼女とおはぎはんが、互いにフリーの取材ライターとしてここあん村を駆け回り、まだ「盾と槍」という運命のバディになる少し前の物語――。ここあん村の金曜の夜は、いつもより少しだけ浮かれた空気が...