箱庭小説

箱庭小説

箱庭小説「寄港地の午後」

ここあん湖畔のブックカフェ「シズカ」を舞台にする「物語の寄港地」シリーズの一編。六月の光は、ブックカフェ『シズカ』の床に、気の早い夏の気配を運んでいた。レコードプレーヤーの針が拾う、かすかなノイズの向こう側で、一音一音、次に置くべき響きを確...
箱庭コント

箱庭小説「ここあんタワー竣工式」|地層3

これはまだ、ここあん村が「あのこと」を経験するずっと前のこと。静寂の中、ここあん村長の緑野翠が壇上に立つ。ビリジアンのドレスが、朝日に映える。彼女は、ゆっくりと息を吸い込み、そして――。「村長の緑野翠でございます。上から読んでもミドリノミド...
箱庭小説

箱庭小説「エスの心細さ」

学バス「さやかっくす」の揺れは、いつも規則性がなくて、胃のあたりを不快にさせる。窓の外には、垂直に移設された校舎が、無意味な巨大な墓標みたいに立っている。僕はリリカさんの真後ろの席から、彼女が読んでいる雑誌を覗き込んだ。ここあん高校の同人誌...
箱庭小説

箱庭小説「それぞれの鎧」

ここあん図書館二階、かつての一般図書フロアは、菜箸千夏にとって、完璧に調律された楽器のような場所だった。背表紙の高さ、色合い、日本十進分類法の聖なる数字。そのすべてがミリ単位で管理され、静謐な調和を奏でる。彼女は書架の端から端までを検分し、...
箱庭小説

箱庭小説「ものがたりをひとつだけ」|はてな

「ものがたりをひとつだけ」人気のケーキ店主・丹波りんが、「あなたの物語、聴きます」と掲げる女、真田まるの営む古民家を訪れる。りんは、自分が作った漆黒のムースを「一番の毒」としてまるに味見させる。まるは、その味が純粋な心を破壊した「罪の味」だ...