ものがたり 箱庭小説「寄港地の午後」 ここあん湖畔のブックカフェ「シズカ」を舞台にする「物語の寄港地」シリーズの一編。六月の光は、ブックカフェ『シズカ』の床に、気の早い夏の気配を運んでいた。レコードプレーヤーの針が拾う、かすかなノイズの向こう側で、一音一音、次に置くべき響きを確... 2026.03.05 ものがたり
ものがたり 箱庭スケッチ「ここあんタワー竣工式」 これはまだ、ここあん村が「あのこと」を経験するずっと前のこと。静寂の中、ここあん村長の緑野翠が壇上に立つ。ビリジアンのドレスが、朝日に映える。彼女は、ゆっくりと息を吸い込み、そして――。「村長の緑野翠でございます。上から読んでもミドリノミド... 2026.03.03 ものがたり
ものがたり 掌編「エスの心細さ」 学バス「さやかっくす」の揺れは、いつも規則性がなくて、胃のあたりを不快にさせる。窓の外には、垂直に移設された校舎が、無意味な巨大な墓標みたいに立っている。僕はリリカさんの真後ろの席から、彼女が読んでいる雑誌を覗き込んだ。ここあん高校の同人誌... 2026.03.02 ものがたり
ものがたり 掌編「それぞれの鎧」 ここあん図書館二階、かつての一般図書フロアは、菜箸千夏にとって、完璧に調律された楽器のような場所だった。背表紙の高さ、色合い、日本十進分類法の聖なる数字。そのすべてがミリ単位で管理され、静謐な調和を奏でる。彼女は書架の端から端までを検分し、... 2026.02.21 ものがたり