2026-03

ものがたり

移動図書館日記(90)

これは、日記という名を借りた私の記憶。ロマコメ号の受付に、少し息を切らせておかあさんがやってきた。この前お渡しした色鮮やかな漬け物の本を、ぽんとカウンターに置く。「これ、目が痛くなるくらい読んだよ。いつか、かあさんを連れてくるわ」短い言葉の...
ものがたり

コント 「回文の幽霊と、あの日のホットワイン」

前段のショートショート【登場人物】氷上 静:批評家。過去の自分たちの言動を「若さゆえの過剰な象徴化」と分析する。神崎 志乃:喫茶「小古庵」店主。変わらない笑顔で、過去と現在を繋ぐ役割。徒然士:屁理屈講師。かつて自分が「文化人代表」から漏れた...
ものがたり

ショートショート「ここあんタワー竣工式」

これはまだ、ここあん村が「あのこと」を経験するずっと前のこと。静寂の中、ここあん村長の緑野翠が壇上に立つ。ビリジアンのドレスが、朝日に映える。彼女は、ゆっくりと息を吸い込み、そして――。「村長の緑野翠でございます。上から読んでもミドリノミド...
ものがたり

物語の「仕掛け」を味わうための短期集中講義【第3回】「物語の『ルール』で遊ぶ技術」

さて、いよいよ最終回です。これまでは「世界」や「日常」の描き方という、いわば物語の「中身」の仕掛けを見てきました。今回は、物語の「器」そのもの、つまり「これは作り話である」という「ルール」自体を、作者がいかにしてもてあそぶか、そのスリリング...
千早亭小倉著作集

千早亭小倉著『ラブちゃんの筑前煮 ここあん村ばなし』

架空の街「ここあん村」を舞台に、そこに生きる人々の日常と密やかな内面を鮮やかに切り取った12編の連作短編集です。居酒屋のママ、完璧主義の駅員、孤独な映画館主など、不器用で愛すべき住人たちが織りなす群像劇。社会のノイズから離れた個人の豊かな時...