これは、日記という名を借りた私の記憶。
ひとつめの仮設団地。
「おはようございます」
私たちに支援してくださっている財団の女性だった。視察があることは高島館長から聞いていた。
微笑んでいるけれど、目力というのだろうか、目の輝きが強い。これから険しい山にでも登るような、真新しいアウトドアウェアに身を包んでいる。舗装の剥げたこの場所を歩くために、彼女なりに考えて選んでくれた格好なのだろう。
「面白いですね」
視察の合間、彼女がそう口にした。少し意外で、けれどすとんと胸に落ちた。中心が一つではなく、あちこちに小さな輪が広がっている。ネットのよう? 誰か一人のための場所ではなく、みんながのんびりと、ただそこにいていい場所。そんな私たちの試みを、彼女は「面白い」と肯定してくれた。
彼女は走り回る子どもたちを、ただ静かに、柔らかな眼差しで見守っていた。その視線に、余計な言葉は混じっていない。ただ、そこにある幼い命を慈しむような、静かな光だった。
「体に気をつけてね」
別れ際、彼女が私の手をぎゅっと握った。握られた手の熱が、じわりと胸に届いた。私たちが守ろうとしているこの「場」だけでなく、そこを訪れ続ける「私」という人間の輪郭まで見ていてくれたのだと、その時初めて気づいた。
分類棚に収まりきらない感情が溢れ出しそうになる。同時に、「偉い人を迎える」と、どこか強張っていた肩の力がゆっくりと抜けていくのがわかった。
これは、日記という名を借りた私の記憶。
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