箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「呼応」

午後五時の時報がここあん村に響き渡ると、佐野健は手元のキューシートから一度目を離した。コミュニティFMのスタジオ内は、秒単位で管理された規律の世界だ。無音検知ユニットのランプは正常な緑色を灯し、生放送のインフラは完璧に維持されている。デッド...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭スケッチ「森の悟り」

【登場人物】新浪 いちご:元国際量子記号研究所研究員の18歳。ここあんの森の奥で暮らし、世界のすべてをデータとして処理する「論理の孤島」。空野 円:ここあん大学哲学科講師。万物を「ただ、そうあるだけ」と受け入れる、論理を無化する超越者。【場...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「柳とハリボテ」

これは、鳥瞰学園ここあん高校の絶対的支配者・黒崎文が、まだ文芸部部長になる前の物語。彼女がなぜ「ここあん高校」を選び、何を背負ってあの部室に座っているのか。そのすべては、祖父の言葉と一つの決断から始まっていた。1.それぞれの悩みカシャリ、と...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(113)遠野編

これは、日記の名を借りた、中野文の記憶。昨夜、千夏さんと静かに語り合った言葉の余韻が、どうやら私の心の奥にある「引き出し」の鍵を、不用意に開けてしまったらしい。遠野の冷たい朝の空気の中で、私はふっと目を覚ました。夢の中の私は、冷たい雨に打た...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

概念ラノベ 第5講・第1話「概念界の危機と、昭和へのダイブ」

灰色の濃淡だけで構成された「忘れられた概念アパート」の日常は、相も変わらずどんよりと澱んでいた。激務に倒れた弱小SE戦士(なんだそれ?)であり、今は概念「月曜日の憂鬱」として人生をやり過ごすイチローは、壁にかかったカレンダーの赤黒い文字を眺...