箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「ステキさんのインデックス」

雨が降っている。リビングの大きな窓を叩く雨粒の音は、まるで無数の小さな手で拍手をもらっているみたい。世界がこぞって、今日のステキさんの完璧なスキンケアを祝福してくれているのね。ソファの端では、プリンちゃんがまた、表紙の真っ黒な難しそうな本を...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭ラノベ|第25話 翻訳者のジレンマ|ここあん高校文芸部

僕らの「共犯」によって生み出された、奇妙な作品の断片。翌日の放課後、文芸部室の長机に置かれたその原稿は、僕と天野さんの間に、新たな種類の、気まずい沈黙を横たわらせていた。成功した、というにはあまりに拙く、失敗した、というには確かな手応えがあ...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「変な癖と当てずっぽう」(対話劇)

椎名町三丁目の雑居ビルにある、編集プロダクション「ぽんちょ」。昨日からの徹夜作業が、ようやくトンネルを抜けたところだった。くたびれたように鳴るコピー機の駆動音を割って、終わりが見えてやけくそ気味にキーボードを叩く音が、朝のオフィスに響いてい...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(114)遠野編

これは、日記の名を借りた、中野文の記憶。息を、口から細く長く吐き出す。吐いた分だけの空気が、鼻の奥をすっと抜けていく。今日の朝の空気は、春の匂いを含んであたたかくさえ感じた。ただ、ここあん村からやってきた千夏さんにとっては、まだ肌を刺すよう...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭ラノベ|第24話 雪だるまとパフェの解剖学|ここあん高校文芸部

文芸部室の長机に広げられた、一枚の大きな白紙。左側には、天野光が描いた、子供の落書きのような、しかし不思議な熱量を放つ「幸福」の絵。右側には、僕、神崎一樹がその絵を翻訳し、再構築した、無機質な「物語の骨格」。僕と天野さんは、その奇妙な設計図...