箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「あの頃、早稲田グランド坂で」

[昭和レトロ]早稲田大学のグランド坂にあるスナック「灯台」を舞台にした掌編小説。一浪して入学したはるひこが、高校時代の不可解な人間関係のカーストを振り返る。狭い教室の息苦しさから、巨大な大学の自由へ。都会の夜、静かに胸に染みる瑞々しい青春の物語。
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「海辺のフェルマータ」

過保護な母との口論は、苦手な柔軟剤の香りが楽譜に移るというひどくくだらない理由から始まった。苛立ちを鎮めるために実家を飛び出し、一人で酒を煽った。東北のオーケストラの打ち上げで鍛えられたという自負は、ここあん村の空気がもたらす気の緩みであっ...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

移動図書館日記(115)

これは、日記という名を借りた私の記憶。遠野から戻り、数日ぶりに本館の通用口を開けた。紙と埃、それにほんの少しの湿気が混ざったいつもの匂いが、静かに鼻をくすぐる。たった数日不在にしただけなのに、随分と長い間ここを離れていたような気がする。ああ...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

概念ラノベ 第5講・第2話「実体化する概念と、昭和の街並み」

「カンカンカンカンカンカン――!」けたたましい踏切の警報音と、地響きを立てて通過する大型通勤車両の轟音が、イチローの脳を激しく揺さぶった。概念界では決して味わうことのない、圧倒的で暴力的なまでの物理的刺激である。「うおぉぉ……頭がガンガンす...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭ラノベ|第26話 影の輪郭、心の温度|ここあん高校文芸部

僕の役割は、もはや建築家ではなかった。彼女の心の奥底に眠る、かけがえのない記憶を、傷つけないようにそっと掘り起こす、不器用な考古学者。翌日の放課後、文芸部室の長机には、昨日と同じ奇妙な静寂があった。だが、その質は明らかに変化していた。僕と天...