箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説(掌編・スケッチ)

連続ジェミ庵小説(13)

第37話「曲がったクリップの用途」【登場人物】鈴木 美桜:ここあん村立図書館の司書。物を捨てられず、あらゆるものに意味を見出す。鴨下 栞:15歳の物語作家。他者の行動を冷徹な視点で観察する。【場面設定】 ここあん村立図書館のカウンター。【ス...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「焚くは落ち葉か筑前煮」

これはまだ、真田まるが「ものがたり屋」を開く前のこと。彼女とおはぎはんが、互いにフリーの取材ライターとしてここあん村を駆け回り、まだ「盾と槍」という運命のバディになる少し前の物語――。ここあん村の金曜の夜は、いつもより少しだけ浮かれた空気が...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「割れない鏡」

アスファルトが八月の陽光を照り返している。東風公園応急仮設住宅の集会所。首を振る扇風機の音と、数人の子供の声。それ以外は沈黙だった。氷上静はパイプ椅子に浅く腰掛け、その沈黙の中にいた。ここあん村を襲った「あのこと」から数年。母の冬子に連れら...
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箱庭小説「深夜の猿哲学」

深夜の編集プロダクション「ぽんちょ」。コピー機の微かな駆動音だけが響くオフィスで、学生アルバイトの恋流波陽こひるははるは、一人でゲラの山と格闘していた。「……終わらない」小さくため息をつき、首を回した時だった。「お疲れ様、はるくん」給湯室の...
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移動図書館日記(107)遠野編

これは、日記の名を借りた、中野文の記憶。千夏さんと車を走らせ、峠を抜けて沿岸部へと出た。かつては車窓からきらきらと光る波頭が見えた道も、今は巨大なコンクリートの壁に阻まれている。車を停め、目の前にそびえる灰色の防潮堤を見上げたとき、千夏さん...