高島雅也

箱庭小説

移動図書館日記(87)

これは、日記という名を借りた私の記憶。――「主任 菜箸千夏」。主任という新しいラベルが、まだ糊の乾ききっていない付箋のように、私の胸元で少しだけ浮いている。一人で背負っていた書架の重みを、今はチームという丈夫な箱に分けて収めている。二階のガ...
箱庭小説

図書館長より職員のみなさんへ

「段階的開放に伴う業務指針と、移動図書館の役割再定義について」高島雅也皆さん、おはようございます。ここあん村立芸術図書館は、三年間にわたる「完全閉鎖」という異常事態に終止符を打ち、一階および二階の一部を村民に開放しました。まず、今日という日...
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移動図書館日記(86)

図書館の開放と新しい座標移動図書館司書・菜箸千夏の日記。三年ぶりの図書館建物開放。開架フロアの復活という奇跡と、本館を補完し能動的に無秩序な現実に寄り添うロマコメ号の新たな役割への力強い決意。[移動図書館/図書館再開/未来]
箱庭小説

箱庭小説「それぞれの鎧」

ここあん図書館二階、かつての一般図書フロアは、菜箸千夏にとって、完璧に調律された楽器のような場所だった。背表紙の高さ、色合い、日本十進分類法の聖なる数字。そのすべてがミリ単位で管理され、静謐な調和を奏でる。彼女は書架の端から端までを検分し、...
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箱庭小説「泥の塔」

エレベーターホールの床に、乾いてひび割れた泥の染みが、所在なく広がっていた。ここを遊び場にしている悪童たちの残したものか、あるいは大災害の後に隆起したこの塔そのものから染み出た泥なのか、緑野翠村長にもわからない。天井の照明はいくつか間引かれ...