箱庭小説

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「眉毛」

古河書店のガラス戸の向こうで、陽光がアスファルトを焼いている。もう何時間も、客の姿はない。店主の古河佐助は、カウンターの奥、自分の尻の形にへこんだ座布団の上で、膝の文庫本から顔を上げた。文字は視界を滑っていくだけで、意味を結ばない。店の中は...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「助け舟」

縁側で日向ぼっこをしながら、まんのすけは気持ちよさそうに目を細めていた。居間から聞こえる義理の姉・ばっしょいと近所の女たちの楽しげな会話に、時折「いや、その話の語源はだね」と口を挟んでは、「まんちゃんは物知りだねえ」と感心されたり、「また始...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「繕われた地図」|「物語の寄港地」シリーズ

ここあん村・寄港地シリーズ。完璧な状態の資料を求め、図書館員の菜箸千夏がブックカフェ「シズカ」を訪れる。手渡されたのは落書きや補修跡の残る古い鳥瞰絵図だった。傷や痕跡こそが地図の生きた時間だと語る小春の言葉に触れ、秩序に固執していた千夏の心が解き放たれる感動物語。
箱庭小説(掌編・スケッチ)

ビターここあん

日常の賑やかなコントや軽快な掌編とは一線を画す、しっとりとほろ苦い「大人の素顔」を描いたシリーズ「ビターここあん」。他の箱庭コントや掌編との一番の違いは、会話のテンポや屁理屈の応酬を楽しむのではなく、「理屈や言葉の鎧が剥がれ落ちた瞬間」をじ...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説|番外編013. 背中の祝儀|二つ目の落語家と代弾きピアニストの恋

伸び悩む落語家・酔酔亭馬楼と、代弾きピアニスト・糠森ひな。中編『二つ目の落語家と代弾きピアニストの恋』で二人が別々の道を歩み出す前の、不器用で愛おしい日常を切り取ったショートスケッチ集。今回は、ひなではなく、馬楼と師匠なまくらとの間で語られ...