地層3

地層3:停滞と波紋の時代(モラトリアムの層)

未知の感染症によって世界が静かに停滞していた令和の初めから、架空の大災害「あのこと」によって村の日常が強制終了する直前までを描く層です。氷上静と恋流波陽の危うい疑似恋愛、若者たちによるリメイク映画の自主制作、糠森ひなと酔酔亭馬楼の不器用な交流など、閉塞感の中でもがく住人たちの群像劇が展開されます。それぞれの人間関係が限界まで張り詰め、恋愛や自己愛が複雑に入り組むドタバタ喜劇としての側面も持ち合わせています。この鬱屈しつつも平穏だったモラトリアムの時代は、未曾有の災害の直撃によって唐突に破壊され、次のフェーズへと移行することになります。

箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭スケッチ「どっちどっち」|地層3

どっちどっち喫茶「小古庵」の昼下がり。店の神崎志乃ママが静かにカップを磨くカウンターから少し離れたテーブルで、文芸評論家の徒然士が大仰なため息をついた。「実に嘆かわしい。今の世は、口を開けば敵か味方か、善か悪か、好きか嫌いか、正しいか正しく...
バックストーリー

ここあん村の「月三部作」って何?

ここあん村を舞台としたさまざまなコントや掌編の中で、地層3を支える「月三部作」と呼ばれるストーリーがあります。そう称される理由は、単にそれぞれの物語の空に月が浮かんでいるからではありません。そこにあるのは、孤独を抱えた人間たちの間に生じるか...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「鶴亀昌子は矛盾している」|地層3

深夜の編集プロダクション「ぽんちょ」は、締め切り間際の独特な熱気に満ちていた。聞こえるのは、パソコンのファンが発する微かな唸りと、誰かのキーボードを叩く乾いた音だけ。その静かな喧騒の中心で、鶴亀昌子——通称かめちゃんは、ゲラの赤字と孤独な戦...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「鈴が鳴る」|地層3

気象庁が今年も「梅雨入りしたとみられる」と、その一言に科学の誠実さを詰め込んで発表した日の午後。ここあん鉄道「大学前」駅のホームには、肌に粘つく生ぬるい空気が澱んでいた。鉄美鈴くろがねみすずは、駅務室の窓から灰色の雲が低く垂れ込める空を見上...
箱庭小説(掌編・スケッチ)

箱庭小説「ラブちゃんの筑前煮」|地層3

午後の遅い日差しが、居酒屋「ここきた」の磨かれた窓ガラスを通り抜けて、店内をさざ波のように輝かせていた。まだ客の来る時間ではない。活田地区の学生街の喧騒も、この路地裏までは届かず、しん、と静まり返った店内は、夜の賑わいが嘘のようだ。渡良瀬愛...