2026-06

箱庭小説

20. K-Pg境界線と九月の終わり|化野環古生物学小日記

夕暮れの静かな研究室で、壁に掛かった一枚きりの暦に目をやる。今日が九月の最終日であることに気づき、その紙片を、ミシン目に沿って丁寧に引き剥がした。パリ、という乾いた音が、世界の区切りを告げる。暦というのは、時間を平らに均すための、極めて人間...
箱庭小説

箱庭ラノベ|第26話 影の輪郭、心の温度|ここあん高校文芸部

僕の役割は、もはや建築家ではなかった。彼女の心の奥底に眠る、かけがえのない記憶を、傷つけないようにそっと掘り起こす、不器用な考古学者。翌日の放課後、文芸部室の長机には、昨日と同じ奇妙な静寂があった。だが、その質は明らかに変化していた。僕と天...
箱庭小説

箱庭小説「ステキさんのインデックス」

雨が降っている。リビングの大きな窓を叩く雨粒の音は、まるで無数の小さな手で拍手をもらっているみたい。世界がこぞって、今日のステキさんの完璧なスキンケアを祝福してくれているのね。ソファの端では、プリンちゃんがまた、表紙の真っ黒な難しそうな本を...
箱庭コント

箱庭コント「ステキさんのちょんまげ」

【登場人物】矢尾 玲子:きさらぎタウンの主婦。自己愛の塊であり、自分のことを「ステキさん」と呼ぶ。神崎 志乃:喫茶「小古庵」のママ。どんな話もニコニコと受け止める究極の聞き手。徒然士:文芸評論家。小古庵の常連。完璧な様式美と倫理を重んじる。...
箱庭コント

箱庭コント「宿派と食派」

【登場人物】徒然士:ここあん大学講師。完璧な様式美を信奉する。鍋島潤:ここあん大学講師。民俗学が専門。現場の生きた言葉を重んじる。【場面設定】学会会場近くにある、鍋島が予約した安宿の1階のカフェテラス。 チェックイン前、徒然士が自身の高級宿...