思考の断片が、揮発性の有機化合物のごとく拡散していく。これを何らかの形で定着させる必要性を感じた。S教授に提出するレポートとは別の、私的な地層として。
化石とは、奇跡的な条件が重なって形成された、過去の生態系の記録体だ。地球上の生物の99%以上は、痕跡すら残さず堆積物の中に溶解し、プレートの沈み込みと共にマントルへ還っていく。私の脳内に生成と消滅を繰り返す思考も、その大部分は記録されることなく、次の神経インパルスのためのエネルギーに再利用されて終わる。いわば、生痕化石にすらなれない存在だ。
このノートは、私の思考の「特異な保存」を試みる実験なのかもしれない。バージェス頁岩のように、通常では残り得ない「軟体部」――すなわち、結論に至る前の、とりとめのない連想や問いそのものを保存するための場所。
この試みがどのような堆積パターンを描くのか。未来の私がこの記録を発掘したとき、そこに何らかの示準化石を見出すことはできるだろうか。まずは、観測を始めることにする。
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