本編は、ここあん高校を舞台にした、「文芸部長の黒崎さんは、僕のことなどゴミムシ同然だと思っている。」シリーズに続く、第二弾です。第一部までのあらすじ、主な登場人物紹介は、この下にあります。
第一部までのあらすじ
ここあん高校に通う神崎一樹は、人間の心理や行動原理をデータとして分析・再構築してしまう「異常性」を持つ(すごい言われよう)。その論理的すぎる思考ゆえに「体温のない文章」しか書けずにいた一樹は、文芸部に入部。そこで、文学至上主義の絶対的女王・黒崎文部長と出合う。
文から、日々「駄文!」と罵倒されながらも、空間の物理的整合性のみを測る三人目の部員・堂島巧、そして生の感情データを提供するバスケ部の「全肯定ガール」天野光とともに、文化祭の部誌に掲載する小説『コンクリートの涙』の共同執筆に挑むことになる。
光が差し出す剥き出しの感情(心臓)を、一樹が論理の骨格へと「翻訳」する共犯関係によって、作品がようやく確かな熱量を帯び始めた矢先、黒崎部長は「家の事情」を理由に突如として部からの離脱を宣言する。怠惰な国語教師・月読リノに顧問の座を押し付け、「あとは任せたぞ、天野」と言い残して部室を去る文。
残された部室で、かつて中学時代に文と光が伝説のコンビ作家だったという過去が堂島の口から明かされ、光が「地下文芸部」という謎の言葉とともに恐怖と憤りの入り混じった涙を流す場面で、第一部は幕を閉じた。

第二部・主要登場人物紹介
神崎 一樹 ここあん高校C組・文芸部員。人間心理をデータとして分解・再構築する分析癖を持つ「建築家」。母・志乃が営む純喫茶「小古庵」の二階に暮らす。黒崎部長が去った後、自らの文章に「体温」を宿すため四つの短編の書き分けに挑む。
天野 光 ここあん高校C組・女子バスケ部員。太陽のように明るく誰をも肯定する少女だが、内面には繊細な孤独を抱える。一樹との共同執筆では生の感情を提供する「心臓」役。理屈よりも物語の「希望」と「温もり」に強く共感する読者。
堂島 巧 ここあん高校A組・文芸部員。物語を「三次元空間の設計図」として読み解き、部屋の間取りや動線の物理的整合性を最優先する風変わりな校正機。部室の片隅から、人間関係や創作のバグを無機質かつ的確に指摘する。
矢尾 リリカ ここあん高校B組の女子生徒。安部公房の小説やウディ・アレンの短編集を愛読し、青春の熱血や感傷を「ガキっぽい」「コスパが悪い」と切り捨てる「冷たい最強」の観察者。バイト先の「微笑書店」で、一樹の四つの文案に冷徹な批評を下す。
海野 みかん ここあん高校の特別非常勤講師。担当は「ヴィネット・散文表現演習」。多色ボールペンを手に、生徒の個性を否定せず「語るな、見せよ(Show, don’t tell)」の引き算の美学を説き、一樹を統合へと導く柔らかな伴走者。
月読 リノ ここあん高校の国語科教諭で、文に呼び出された文芸部顧問。あだ名は「リノリウムの床」。よれよれのジャージ姿で常に面倒くさがっており、一樹の創作上の悩みを非常勤講師の海野みかんへと丸投げする。
神崎 志乃 一樹の母で、ここあん湖を望む純喫茶「小古庵」の店主。白いブラウスとエプロンを纏い、誰の話も否定せず静かに受け止める聞き上手。理屈っぽい息子と、店を訪れる天野光のやり取りを温かく見守る。
さて、第一部のメンバーに、矢尾リリカ、海野みかんも加わり、どんな話が展開するか? どうぞお楽しみに。
作・千早亭小倉
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