箱庭小説

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箱庭小説「寄港地の名前」

ここあん湖畔のブックカフェ「シズカ」を舞台にする「物語の寄港地」シリーズの一編。閉店後のブックカフェ「シズカ」は、昼間とは質の違う静けさに包まれていた。窓ガラスの向こうの暗闇が、店内の密度の濃い沈黙を際立たせている。カウンターの中では中野小...
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掌編「模擬面接バス」

霧に濡れた路面が、タイヤを介して微かな震動を伝えてくる。さやかっくすは指先に力を込めず、掌の皮一枚でその震えを読み取った。自身の神経が、ステアリングのシャフトを通って路面にまで伸びている感覚。彼女にとって、己の筋肉と神経を制御下に置くことは...
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掌編「焚くは落ち葉か筑前煮」

これはまだ、真田まるが「ものがたり屋」を開く前のこと。彼女とおはぎはんが、互いにフリーの取材ライターとしてここあん村を駆け回り、まだ「盾と槍」という運命のバディになる少し前の物語――。ここあん村の金曜の夜は、いつもより少しだけ浮かれた空気が...
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掌編「割れない鏡」

アスファルトが八月の陽光を照り返している。東風公園応急仮設住宅の集会所。首を振る扇風機の音と、数人の子供の声。それ以外は沈黙だった。氷上静はパイプ椅子に浅く腰掛け、その沈黙の中にいた。ここあん村を襲った「あのこと」から数年。母の冬子に連れら...
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掌編「深夜の猿哲学」

深夜の編集プロダクション「ぽんちょ」。コピー機の微かな駆動音だけが響くオフィスで、学生アルバイトの恋流波陽こひるははるは、一人でゲラの山と格闘していた。「……終わらない」小さくため息をつき、首を回した時だった。「お疲れ様、はるくん」給湯室の...