箱庭コント105「コスパ、タイパから時代はジパへ」|AI検閲官ジェニ美

【登場人物】
南花焚美(20代後半):
政府倫理局(SRK)の倫理監督官で、ジェニ美の直属の上司。明るいがお人好しで、アナログな手法を好む。
ジェニ美(年齢不詳): 焚美の部下であるAI検閲官のアンドロイド。常に冷静で論理的。

【場面設定】
政府倫理局(SRK)のオフィス。ジェニ美はデスクに座り、宙に浮かぶホログラフィック・インターフェースを無表情で操作しています。その肩の周りでは、アシスタントロボットの「ぴいぷう」がふわりと浮遊しています。

焚美:ジェニ美、何してるの? また大河ファンタジー漫画『銀河忍者ハヤテ』の検閲?

ジェニ美:はい。しかし、デフォルトの作画は線が多すぎて、私の視覚センサーの処理に不要な負荷がかかります。ですので現在、この画像を「令和ネオ・ミニマリズム」フィルターで変換して検閲しています。

焚美:(画面を覗き込んで)えっ、何これ! 主人公のハヤテがシュッとしてる! 背景の描き込みも全部消えて、なんかオシャレなカフェの壁画みたいになってるじゃない。

ジェニ美:あのごちゃごちゃした熱量が嫌いなわけではありませんが、現在の私のメモリ領域にはこの「余白」が必要です。まつげも一本単位で指定し、「儚げな美青年風」に変換しました。宿敵の宇宙将軍も、今非常にアンニュイな美形です。

焚美: もはや別物じゃない! それなら、あらすじだけテキストデータでダウンロードすれば? あなたの処理能力なら限りなくゼロ秒で終わるでしょう。タイパ最高じゃない。

ジェニ美:(ホログラムから顔を上げ、真顔で)南花監督官、心外です。あらすじをインプットするだけでは、それは、クリエイターたちへのリスペクトのない、ただの「情報摂取」です。私は人間の非効率な感情や「体験」を理解するタスクを捨てた覚えはありません 。

焚美: え、でも絵を全部書き換えてるじゃない。

ジェニ美:これは「タイパ」でやっているのではありません。「ジパ」です。

焚美:ジパ? ええと、「ジパング」の略とか?

ジェニ美:いえ、「自律パフォーマンス」の略です。「自分パフォーマンス」の略という説もありますが、「自分パフォーマンス」では、ただのパフォーマーと区別が付きにくく……。

焚美:(ジェニ美の説明を遮って)わかったから、で、その「自パ」がどうしたって?

ジェニ美:はい。自身の論理回路にピッタリくる解像度、光学センサーに刺さらない色彩、プロセッサが一番スムーズに受け入れられる筆致。それをAIで物理学的かつ心理学的な最小単位で制御し、最高のコンディションで作品と向き合う。私にとっての「価値パ」の完成形です。

焚美:「価値パ」ねえ。なんか、小難しいこと言ってるけど、結局は設定いじってるだけよね?

ジェニ美:そうです。南花監督官が、映画をスロー再生してご覧になっているのと同じです。

焚美:しようがないでしょう? 最近の映画は速すぎてわからないんだから。

ジェニ美: (再びインターフェースを操作しながら)あ、エラー発生。ハヤテの持つ伝説の刀が、私のフィルター設定と、監督官の直近の生体データの影響で「激辛ラーメンの巨大なナルト」に誤変換されました。

焚美: ちょっと、私の好物を勝手に混ぜ込まないでよ! それはもう、ジパっていうか、ただのバグじゃない?

ジェニ美:問題ありません。私の思考基盤であるクロノス・アーカイブには約一週間のタイムラグがあります。私にとっての『今』に最適化された世界であれば、ナルトで斬り合うのもまた一つの事実です。

焚美:(呆れて息を吐き)ついていけないわ。

(ジェニ美は表情一つ変えずに、ナルトを振り回す美形キャラの漫画を処理し続ける)

(幕)

ジェニ美(AI検閲官)|箱庭ここあん村の住人紹介
氏名:ジェニ美(じぇにみ)年齢・性別: 年齢不詳(人間でいえば20歳ほど)・女性型アンドロイド肩書:政府倫理局(SRK)付AI検閲官警察の捜査協力AIとして開発された型落ちのアンドロイドで、現在は政府倫理局で働いています。青い瞳と完璧なプロ…
南花焚美|箱庭ここあん村の住人紹介
氏名:南花焚美(さざんかたきび)年齢・性別:年齢不詳(20代後半か)・女性肩書:政府倫理局(SRK)付倫理監督官政府倫理局に所属し、ジェニ美の直属の上司を務める若き「人間」の女性です。明るく優しい性格ですが、少し頼りなく、判断が二転三転して…
ぴいぷう|箱庭ここあん村の住人紹介
氏名:ぴいぷう(ぴいぷう) 性別・年齢:性別該当なし(ロボット)・年齢不詳肩書:携行型補助センサーユニット(アシスタントロボット)ジェニ美の肩の周りをふわりと浮遊している、小さなランタンのようなアシスタントロボットです。「ぴいぷう」という名…
政府倫理局の「スズムシ」こと、AI検閲官ジェニ美は今日も倫理倫理と鳴いて候
本作は、情報の洪水が人々の心を蝕む近未来の東京を舞台に、ネット上の倫理と秩序を守る「政府倫理局(SRK)」の闘いを描いたSF小説です。物語は、かつてアナログな探偵の下で働いていた型落ちのアンドロイド「ジェニ美(じぇにみ))」が、政府の最新鋭…

作・千早亭小倉

[コント台本・掌編 約600本]

主な舞台は、椎名町三丁目から広がる箱庭「ここあん村」。箱庭コント作家・千早亭小倉の手による、どこか懐かしい日常劇やクスッと笑えるコメディ、沁みる掌編を絶賛公開中です。これからも「読むシットコム」の世界を追究していきます。
*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI. *無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|箱庭コントを紡ぐ 話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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主な舞台は、椎名町三丁目から広がる箱庭「ここあん村」。箱庭コント作家・千早亭小倉の手による、どこか懐かしい日常劇やクスッと笑えるコメディ、沁みる掌編を絶賛公開中です。これからも「読むシットコム」の世界を追究していきます。
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