ペンタは、ここあん村の「霧のところ」最深部に、大地を突き破るように隆起した五角形の巨大な石造建築です。大災害で失われた知性の質量を補完するかのように現れたこの塔は、ボルヘスの「バベルの図書館」を彷彿とさせる不条理な垂直空間であり、内部で時空が歪み、外観から推測される以上の階層を内包しています。
このペンタの中層階(11階〜30階)は「ここあん大学芸術学部(学部課程)」と「先端融合システム創成研究科(大学院課程)」が占領しています。
「先端融合システム創成研究科」は、水没で居場所を失った理系分野と、芸術の理論系を、大学側が適当な横文字と漢字で強引にくっつけた「器」です。学生たちは自嘲気味に、「寄せ集め」「キャンプ」などと呼んでいます。
この研究科の下に、次の3つの専攻が適当にぶら下げらています。
基幹・生命動態解析専攻:花野環奈、平泉慧、篠田律など、自然科学こじらせ系が所属。数億年の地層や物理法則、DNAを扱うが、名前が長すぎるため誰も正式名称で呼びません。
社会・複雑系モデリング専攻:古暮賢人、金田エリ、権田猛など、社会科学こじらせ系が所属。経済、地政学、宇宙まで風呂敷を広げすぎるパラサイトたちの温床です。
感性情報・芸術理論専攻: 綾小路幹ら、芸術系こじらせ系が所属。音楽美学など、実技はできないが理屈だけをこねる芸術系がここに押し込まれています。共飛鳥は他大学の院生ですが、幹の幼馴染として勝手に入り浸っています。
彼らに割り当てられている研究室「先端融合統合研究室」は、「前衛的なオブジェが廊下を塞いでいてトイレに行けない」「隣の垂直表現専攻の学生が、窓の外で一日中奇声を上げながら壁を登っている」といった、芸術学部のカオス(論理の通じないノイズ)が支配する空間です。そのため、理屈と秩序を愛する理系院生たちは完全に肩身が狭く、ペンタの自室の中でも「窓のない資材置き場のような一角」にバリケードを築き、息を潜めて吹き溜まっています。
ペンタの非論理的な環境に耐えきれなくなった彼らは、さやかっくすが運転する学バスに揺られ、わざわざ遠く離れた「早稲田サテライトキャンパス」へと逃げ込みます。 彼らが目指すのは、徒然士や熱田功子といった文系教員たちの目が届かない、3号館地下1階の薄暗いラウンジ「アンコンフォーミティ」です。ペンタでは芸術の暴力に怯えている彼らも、この地下室に辿り着いた途端に水を得た魚のようになり、黒板に数式を書き殴りながら、誰の役にも立たない「マクロな宇宙とミクロな物理法則のマウント合戦」を嬉々として繰り広げます。
なお、下層階(1階〜10階)には、「ここあん大学芸術学部 附属高度創造研究校」に位置づけられる「ここあん高校」があります。
村からは霧に隠れて見えませんが、屋上からは村の営みを箱庭のように一望できます。地図にない「五番目の道」だけがこの異界へと続き、管理人のさやかっくすがパルクールで外壁を自在に駆け巡る姿は、重力に抗う知性の限界を肉体で嘲笑っているかのようです。
地下階は湖底に沈んだ旧キャンパスと「臍帯」で繋がっていると囁かれています。

自称管理人さやかっくす
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