【登場人物】
緑野 翠:ここあん村村長。村を完全に掌握したい理想主義者。「てへっ」が口癖。
たたこ:ここあん村唯一の議員。ドラマーであり、スティックで机を叩いて議案を可決する。
矢尾 リリカ:ここあん高校の生徒。常にシニカルな視点を持つ「冷たい最強」。
【場面設定】
巨大塔「ペンタ」五階にある仮役場、村長執務室。

緑野翠:はっ。恐ろしい夢を見たわ。このここあん村の人口が、5000人の都市になっていたのよ。
矢尾リリカ:5000人? 東京都内の普通の町内会レベルの規模ですけど。それを都市と呼ぶのは大げさですね。
たたこ:150人の村から見りゃ、5000人は大帝国だぜ。で、夢の中で何があったんだ。
翠:それが大変なのよ。5000人もいたら、私の「てへっ」が最後尾の村民まで聞こえないじゃない。行政のトップとして致命的なバグよ。
リリカ:懸念する第一ポイントがそこですか。
翠:それに、5000人規模になったら、たたこさん。あなたの議会も定数が30人くらいに増大するわ。
たたこ:げっ。あたしがスティックで机を叩いて可決する前に、他の29人が反対票を投じるってことか。あたしのビートが多数決に飲み込まれてしまうじゃない。
翠:さらにインフラも崩壊するわ。ここあん鉄道では、鉄美鈴さんの指差し確認が追いつかなくて、彼女は過呼吸でダイヤグラムの妖精になってしまうわ。「小古庵」なんて、カウンター席が足りなくなって、徒然士先生が外で立ち飲みを強いられるわね。
リリカ:徒先生が立ち飲みするのは、別にかまわないような。
たたこ:待てよ。5000人もいれば、あたしら「栗きんとん99」のライブ動員も増えるってことじゃないか。悪くないじゃん。
翠:だめよ。5000人もいたら、全員の顔と好みの税金の納め方が把握できなくなるわ。私が完全に掌握できないものは、この村には存在してはならないの。
リリカ:村長。それ、完全に独裁国家のトップのセリフですけど。
翠:とにかく、人口爆発を防ぐために緊急議案の提出よ。「村長の声が届かない範囲の人口増加を禁止する条例」を制定するわ。
たたこ:(スティックで机をひと叩き)異議なし。可決!
リリカ:この村の人口が150人から一生増えない理由が、今ここで完全に証明されましたね。
翠:ところでリリカさん? あなたなんでここにいるの?
リリカ:ペンタのエレベーター、階数表示が間違ってますよ。理科の実験が終わって、A組に戻るところだったんですけど。
(幕)
作・千早亭小倉





