コント「魔法使いのよめいり」

【登場人物】
はるひこ
:小学5年生。左利き。絶対的観察者。
みちこ:はるひこの母。専業主婦。ソファと一体化している。
なつひこ:はるひこの弟。いつも「らっら」と言っている。

【場面設定】
昭和47年。成城のはるひこ家の居間。はるひこは床に座り、セイカの「魔法使いサリー」かるたを広げている。みちこはソファで仰向けになり、天井を見つめている。なつひこは床で、『ねずみのよめいり』(小学館の育児絵本)を4冊、ぴったり横に並べている。絵本は全部同じもの。

はるひこ:なんでうちに「魔法使いサリー」のかるたしかないんだろう。

みちこ:(天井を見たまま)あんたが欲しがったんでしょう? この前、おもちゃ屋に行ったときに。

はるひこ:「仮面ライダー」のかるたが欲しかったんだよ。

みちこ:しようがないじゃない、無かったんだから。あんた、いつも「魔法使いサリー」、テレビで見てるじゃない。

はるひこ:しょうがいないじゃない(みちこの声真似)。いっつも再放送してるんだから。(ぶつぶつ)ひとりでかるたをやってもちっとも面白くないや。

(みちこ、ソファーの上で寝返りをうち、はるひことなつひこに背を向ける)

なつひこ: らっら、らっら。

(なつひこは、並べた4冊の『ねずみのよめいり』の表紙をじっと見つめている)

はるひこ: (読み札を1枚引いて、棒読みで読み上げる)ひ、『ひとりでたいくつなにをしようかな』の「ひ」。

(はるひこは、床に散らばった絵札を探す。カブが、頭の後ろで手を組んでソファでだらんと寝そべっている絵札を見つける)

はるひこ:あ、あった。

(はるひこは、その絵札と、ソファで仰向けになっているみちこを交互に見る)

はるひこ:お母さん、この札、お母さんそっくりだよ。カブがごろごろしてる。

みちこ:(ピクリとも動かずに)お母さんは、退屈してないし、何もしたくないの。

はるひこ:そうだよ。退屈なのは僕のほうだよ。

(はるひこは、手持ち無沙汰になり、なつひこのそばにすり寄る。なつひこは耳元で指をこすり合わせている。シャリ、シャリという音がする)

はるひこ:なっちゃん、これ。

(はるひこが、さっきのカブの絵札を、4冊並んだ『ねずみのよめいり』のすぐ横に、そっと置く)

なつひこ:(絵札にはまったく視線を向けず)いっ、いっ。

(なつひこは、横にあった5冊目の『ねずみのよめいり』を、はるひこが置いた絵札の上にバサッと被せて並べる。絵札は完全に隠れる)

はるひこ:(ノートと短い鉛筆を取り出してカリカリと書く)か、か、『カブが絵本のしたじきになった』。

みちこ:(ため息をつく)そんな札ないでしょう?

(みちこがだるそうに起き上がり、ずってはるひこたちに近づく。読み札を読み上げ始める、みちこ)

みちこ:『たいへんたいへんとあわてるサリー』? なにこれ?

はるひこ:わーい。「た」だよ。たいへん、たいへん、たいへん。

なつひこ:らっら、らっら。

(幕)

*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。
*The articles on this site were written by a human, peppered with AI.
*無断転載禁止 Copyright © 2025 千早亭小倉|話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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