箱庭コント341「フフフのおばさん」

【登場人物】
徒然士
:文字の造形や言葉の起源に過剰なこだわりを持つ文芸評論家。
菜箸かな:落ち着いた気品のある翻訳家。竹ぼうきで落ち葉を掃いている。

【場面設定】
秋の午後。きさらぎタウンのイチョウ並木。黄色い落ち葉が一面に散らばっている。

(菜箸かなが竹ぼうきを手に、サッサと軽快に落ち葉を掃いている。 徒然士の姿を目に止め、声をかける)

菜箸かな:フフフ、徒然士先生、今日はこちらまでお出かけ?

(通りかかった徒然士が、その場でピタリと足を止める)

徒然士:いま、何と?

かな:お出かけですか?

徒然士:ひらめいた。かな君、いま君は、楽しげに「フフフ」と笑い、続けて「お出かけですか?」と優しく私に問うた。

かな:それが何か?

徒然士:見よ、その足元を!

(かながサッと竹ぼうきを動かすと、足元の黄色いイチョウの葉が、カサリと音を立ててクルリと何枚もひっくり返る)

徒然士:それだ! 見たかね。いま、イチョウの葉が裏返った瞬間を!

かな:ええ。掃いたらひっくり返るくらい当たり前ですよ。もっとひっくり返しますか?

徒然士:いや、十分だ。文字の天地反転だ! 君が口にした「フ」というカタカナ文字が地面に落ち、ほうきで掃いた拍子に上下逆にひっくり返ったと考えてみたまえ。「フ」を裏返せば、そのまま「レ」になるではないか!

(かな、何かを思い浮かべている表情)

かな:あら、本当ですね。上下を反転させると、たしかに「レ」になりますね。

徒然士:だろう? 赤塚不二夫が生み出した名物キャラクターのひとり、あの黄色い着物を着たおじさんは、散らばった文字を竹ぼうきで掃いて裏返していたのだ! つまり「レレレのおじさん」の真の姿は、この道端で優雅に掃き掃除をしながら笑う、君のような「フフフのおばさん」だったのだよ!

(徒然士が得意満面に胸を張る。かなは竹ぼうきの手を止め、静かに徒然士を見る)

かな:おばさんじゃないわよ。

徒然士:えっ、あっ、いや。

かな:別にいいけど。

(かなは何事もなかったかのように、「フフフのフ〜」と言いながら、落ち葉掃きを再開する)

徒然士:ぬうっ。世紀の大発見をしたはずなのに、何ゆえか満たされない……。

(幕)

作・千早亭小倉


菜箸かな|箱庭ここあん村の住人紹介
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[コント台本・掌編 約600本]

主な舞台は、椎名町三丁目から広がる箱庭「ここあん村」。箱庭コント作家・千早亭小倉の手による、どこか懐かしい日常劇やクスッと笑えるコメディ、沁みる掌編を絶賛公開中です。これからも「読むシットコム」の世界を追究していきます。
*ここあん村および本サイトに掲載している小説類の設定はフィクションです。 *The articles on this site were written by a human, peppered with AI. *引用の範囲を超える無断転載・複製を禁じます。 Copyright © 2025-2026 千早亭小倉|箱庭コントを紡ぐ 話紡庵レーベル All Rights Reserved.

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