【登場人物】
カート:ここあん高校A組。絶望的な状況も乾いたユーモアで受け流す、魚座。
ケニー:ここあん高校B組。地味な文学少年(読み専)。カートの諦観を静かに理解している。
【場面設定】
昼休みのここあん高校の学食。壁掛けのテレビから、昼のニュースの星占いコーナーが流れている。カートとケニーが向かい合って定食を食べている。

カート:テレビの星占いって、いつも魚座が12位なんだよね。今日もまた魚座が12位だよ。
ケニー:(文庫本から顔を上げずに)そんなわけないだろ。
カート:いや、あれは人間が割り振っているものだからね。テレビ局の人が、牡羊座、牡牛座、双子座って順番に運勢を当てはめていく過程で、たいてい最後の魚座の番になる頃には、一番面倒な12位の枠が残っているんだよ。僕自身が魚座だから、長年観測してきて間違いない。
ケニー:君の偏った妄想だろ。……あ、画面見てみろ。ちょうど今日の12位の発表だ。
テレビの音声:『今日の12位は魚座です。いろいろな頼まれごとをされて疲れてしまう一日でしょう』
ケニー:……ほんとに魚座だった。
カート:(スプーンを持ったまま、画面を見て)なっ。
ケニー:「なっ」って、カートは落ち込まないのか。
カート:もう慣れちゃったよ。突然時間がシャッフルされたり、空飛ぶ円盤にさらわれたりする宇宙の不条理に比べたら、「いろいろな頼まれごとをされて疲れる」なんて、誰かに必要とされるだけ、むしろマシだよ。
ケニー:トラルファマドール星人(カート・ヴォネガットの小説に登場する架空の宇宙人)みたいな諦観だな。じゃあ、悪いんだけど、俺が読み終わった図書室の本も、ついでにカウンターに返しておいてく……。
カート:(皆まで聞かず)断る。
ケニー:運命に逆らうんだな。
カート:当然の権利だ。
(幕)
作・千早亭小倉



